今の自分を受け入れる事が一番大切。

【オープニング】

岸田　それでは、がんノートmini、本日もスタートしていきたいと思います。今日のゲストは 尾崎ゆうこさん です。よろしくお願いします。

尾崎　お願いします。

岸田　よろしくお願いします。尾崎さん、そのおしゃれな眼鏡がとても素敵ですね。

尾崎　ありがとうございます。

岸田　本当に素敵な装いです。まず簡単に私の自己紹介をさせてください。私は25歳と27歳のときにがんを経験し、現在はNPO法人がんノートの代表理事として活動しています。本日はMCを務めさせていただきます。

岸田　そして本日のゲスト、尾崎ゆうこさんですが、茨城県のご出身で、現在は東京都にお住まいです。お仕事はオンラインショップの運営をされているとのことで、後ほどそのあたりも詳しく伺っていきたいと思います。

岸田　そして、趣味には短歌、手芸、音楽鑑賞と書いていただいています。短歌については後ほど伺うとして、まず手芸とはどんなことをされるんですか？

尾崎　編み物もしますし、雑貨を手作りして販売もしています。

岸田　素敵ですね。ものづくりの温かさが伝わってきます。音楽鑑賞についても書かれていましたが、好きなアーティストはどなたですか？

尾崎　はい。最近は藤井風さんばかり聴いています。

岸田　藤井風さん、いいですよね。ピアノと歌声の組み合わせが本当に素晴らしい。ありがとうございます。そしてがんの種類ですが、子宮頸がん、ステージは 1b1期。告知されたのが 36歳 のときで、現在は 39歳 とのことです。治療は手術とのことですが、このあたりも後ほど詳しく伺っていきたいと思います。

【ペイシェントジャーニー 】

岸田　ではここから、尾崎さんのペイシェントジャーニーを一緒に振り返っていきたいと思います。
　ペイシェントジャーニーとは、気持ちの上下をグラフにして、上に行けば気持ちが上がっている状態、下に行けば落ち込んでいる状態、そして右に進むほど時の経過を表しています。

　吹き出しの色にも意味があり、赤はポジティブ、青はネガティブ、白はどちらでもないニュートラル、灰色は治療に関する出来事を示しています。そうした色の変化も含めて、尾崎さんの歩みをたどっていきたいと思います。

　尾崎さんのペイシェントジャーニー、まるで「V」かナイキのロゴのような形になっていて、気持ちの大きな浮き沈みが見えるんですよね。今日は、2018年から現在に至るまでのお気持ちの変化を伺っていきます。

岸田　最初のところに「オンラインショップの経営が絶好調だった」とあります。この頃は、どのようなお仕事をされていたんですか？　先ほどお聞きした手芸が関係しているんですか？

尾崎　2017年頃から始めていたんですが、フラワーアレンジメントやブーケなど、花を使った作品を販売していました。

岸田　オンラインショップで？

尾崎　はい、そうです。

岸田　すごいですね。仕事も順調で、ちょうど波に乗っていた時期だったんですね。

尾崎　はい。最初の1年は大変でしたが、2018年の夏頃からオーダーが増えて、軌道に乗り始めていました。

岸田　そんな中で、がんが発覚していくことになるわけですが、不正出血が続いたことがきっかけだったんですね。

尾崎　不正出血は、実は2018年の初め頃から時々ありました。ただ、不正出血って痛みもないし、血もすぐ止まるので、何となく放置してしまっていたんです。

岸田　たしかに、痛みがないと様子を見てしまうことってありますよね。そこから受診につながったきっかけは？

尾崎　当時3歳の娘がいて、もう一人欲しいと思って妊活を始めていたんです。妊活中に出血がひどくなってきて、「これは念のため診てもらおうかな」と思って受診しました。仕事も少し落ち着いていた時期だったので、軽い気持ちで頸がん検診に行きました。

岸田　最初はあくまで不正出血を診てもらいに行った、ということなんですね。

尾崎　そうです。不正出血の相談で行ったら、頸がん検診も一緒に行われたという流れです。

岸田　大学病院での検査が続き、その中で病気が分かったということですか？

尾崎　はい。最初の小さな病院では内診だけして、「結果は1週間後に」と言われていたんですが、3日後に先生から直接電話があったんです。こういうときって「悪い結果かもしれない」という不安がよぎるのですが、案の定「大学病院で詳しく診てもらってください」と言われました。

　その翌日に大学病院へ行き、MRI、血液検査、内診など、本当に検査づくしの1カ月でした。

岸田　そこから浸潤の有無や状態が分かり、手術日程や術式が決まっていったということですね。
　術式はどのようなものだったのでしょうか？

尾崎　広汎子宮全摘術 に加えて、リンパ郭清を行いました。

岸田　かなり広範囲の手術ですね。

尾崎　はい。ステージ1の場合、子宮を取るケースが多いのですが、私の1bという段階では、子宮と卵巣、さらに腰あたりにあるリンパ節もすべて取ることになりました。病理検査と再発予防のためです。

岸田　卵巣も両方ですか？

尾崎　はい。医師から「両方取ったほうがいい」と言われました。私は受け入れたのですが、両親は「残せないの？」と反対していました。もう一人子どもを望んでいたこともあり、気持ちはとても揺れました。ですが、夫と相談し、再発のリスクを避けるために先生の提案を信じて手術することにしました。

岸田　ではここから、尾崎さんのペイシェントジャーニーを一緒に振り返っていきたいと思います。
　ペイシェントジャーニーとは、気持ちの上下をグラフにして、上に行けば気持ちが上がっている状態、下に行けば落ち込んでいる状態、そして右に進むほど時の経過を表しています。

　吹き出しの色にも意味があり、赤はポジティブ、青はネガティブ、白はどちらでもないニュートラル、灰色は治療に関する出来事を示しています。そうした色の変化も含めて、尾崎さんの歩みをたどっていきたいと思います。

　尾崎さんのペイシェントジャーニー、まるで「V」かナイキのロゴのような形になっていて、気持ちの大きな浮き沈みが見えるんですよね。今日は、2018年から現在に至るまでのお気持ちの変化を伺っていきます。

岸田　最初のところに「オンラインショップの経営が絶好調だった」とあります。この頃は、どのようなお仕事をされていたんですか？　先ほどお聞きした手芸が関係しているんですか？

尾崎　2017年頃から始めていたんですが、フラワーアレンジメントやブーケなど、花を使った作品を販売していました。

岸田　オンラインショップで？

尾崎　はい、そうです。

岸田　すごいですね。仕事も順調で、ちょうど波に乗っていた時期だったんですね。

尾崎　はい。最初の1年は大変でしたが、2018年の夏頃からオーダーが増えて、軌道に乗り始めていました。

岸田　そんな中で、がんが発覚していくことになるわけですが、不正出血が続いたことがきっかけだったんですね。

尾崎　不正出血は、実は2018年の初め頃から時々ありました。ただ、不正出血って痛みもないし、血もすぐ止まるので、何となく放置してしまっていたんです。

岸田　たしかに、痛みがないと様子を見てしまうことってありますよね。そこから受診につながったきっかけは？

尾崎　当時3歳の娘がいて、もう一人欲しいと思って妊活を始めていたんです。妊活中に出血がひどくなってきて、「これは念のため診てもらおうかな」と思って受診しました。仕事も少し落ち着いていた時期だったので、軽い気持ちで頸がん検診に行きました。

岸田　最初はあくまで不正出血を診てもらいに行った、ということなんですね。

尾崎　そうです。不正出血の相談で行ったら、頸がん検診も一緒に行われたという流れです。

岸田　大学病院での検査が続き、その中で病気が分かったということですか？

尾崎　はい。最初の小さな病院では内診だけして、「結果は1週間後に」と言われていたんですが、3日後に先生から直接電話があったんです。こういうときって「悪い結果かもしれない」という不安がよぎるのですが、案の定「大学病院で詳しく診てもらってください」と言われました。その翌日に大学病院へ行き、MRI、血液検査、内診など、本当に検査づくしの1カ月でした。

岸田　そこから浸潤の有無や状態が分かり、手術日程や術式が決まっていったということですね。
　術式はどのようなものだったのでしょうか？

尾崎　広汎子宮全摘術 に加えて、リンパ郭清 を行いました。

岸田　かなり広範囲の手術ですね。

尾崎　はい。ステージ1の場合、子宮を取るケースが多いのですが、私の1bという段階では、子宮と卵巣、さらに腰あたりにあるリンパ節もすべて取ることになりました。病理検査と再発予防のためです。

岸田　卵巣も両方ですか？

尾崎　はい。医師から「両方取ったほうがいい」と言われました。私は受け入れたのですが、両親からは「残せないの？」と反対されました。もう一人子どもを望んでいたこともあり、本当に気持ちが揺れました。でも夫と相談し、再発のリスクを避けるためにも先生を信じて手術しよう、という結論になりました。

　手術後は体力もまだ戻らず、気持ちの面でも引きずっていた時期でした。

岸田　そうだったんですね。そこから、気持ちが徐々に上向いていくきっかけになるのが “短歌との出会い” なんですよね。短歌に出会うタイミングってなかなか想像しづらいのですが、どんなきっかけだったのでしょうか。

尾崎　たまたま手に取った『食器と食パンとペン』という短歌の本があったんです。イラストレーターの方が作った歌集で、いろいろな現代歌人の短歌が載っているんですが、それを読んだ瞬間に引き込まれて……。「あ、私にもできるかもしれない」と思ってしまったんです。

岸田　“現代短歌”というジャンルがあるんですね。

尾崎　はい。和歌とはまた違って、今お話ししているような日常の言葉で作る短歌なんです。とても身近に感じられて、気付いたら夢中で読み始めていました。

岸田　そこから『あの風プロジェクト』につながっていくわけですね。このプロジェクトについて教えていただけますか。

尾崎　これは、短歌とサバイバーシップを掛け合わせた取り組みです。SNSで女性サバイバーを募って、一緒に「サバイバーだからこそ抱く感情」や「経験」を短歌にする。そして最終的に一冊の本として出版を目指そう、というプロジェクトでした。

岸田　SNSで仲間を集めて、出版までつながったんですね。短歌レッスンという項目もありますが、レッスンを受けられたんですか？

尾崎　はい。私自身も短歌を始めたばかりで、知識も全然なかったんです。出版なんて未知の世界で、“どうやって本を出すの？” というところからのスタートでした。そこで、歌集を多く出されている人気歌人・岡野大嗣さんにお願いして、オンラインで短歌のレッスンを受けました。いろいろなアドバイスをいただきながら、出版に向けて作業を進めていきました。

岸田　師事する先生がいたんですね。

尾崎　はい、師匠です（笑）。

岸田　行動力が本当にすごいです。

尾崎　当時は少しハイになっていたのかもしれないですね（笑）。

岸田　そしてクラウドファンディングを経て、出版へ。

尾崎　本当に多くの方に助けていただいて、何とか出版にこぎ着けました。

岸田　素晴らしいです。後ほどURLも載せておきますね。さて、その後、少し気持ちが下がる出来事として「オンラインショップの再開」があります。これはどのような状況だったのでしょうか。

尾崎　そうですね。以前のようにフラワーアレンジメントやブーケを作るには時間もかかりますし、何よりお客様との細かいやり取りも必要です。当時の体力では一人で続けるのが難しく、告知後すぐに閉店しました。再開した際は、規模を縮小し、雑貨やハンドメイド小物、アンティーク、デザインペーパーを使った作品などを販売しています。今はマイペースに続けています。

岸田　もともと手芸がお好きでしたし、自然な流れでもありますね。

尾崎　そうですね。趣味の延長に近いですが、無理なく続けられています。

岸田　そして再び気持ちが上がる出来事が「会いたかった人に会う」と書かれています。どんな方に会われたのですか？

尾崎　本を一緒に作ったサバイバーの仲間たち、それから出版を担当してくださった編集者のツツイさん。そして、ようやく念願叶って岡野さんにも直接お会いできたんです。1月になってしまいましたが、会うことができて本当に嬉しかったです。

岸田　当時はまだコロナ禍でしたから、なかなか直接人に会うことが難しい時期でしたよね。そんな中でも、仲間や支えてくれる人たちに実際に会うことができたのは、大きな出来事だったのではないでしょうか。そして現在は、娘さんが小学生になられたということで、卒園からの生活も大きく変わっていますよね。

尾崎　もう大変です。毎日ばたばたしています。

岸田　本当にそうですよね。子育てって、本当にすごいことだと思います。

尾崎　一人でやっているので、なおさら大変です。「一人なのに……」って思う瞬間もあります。

岸田　それでも、ゆうこさんがここまで乗り越えてこられたからこそ、忙しさの中にも楽しさがあって、前向きに日々を過ごされているのだと思います。ペイシェントジャーニーでもポジティブなポイントに上がっていますし、そういった気持ちが伝わってきます。ありがとうございます。

【大変だったこと→乗り越えた方法】

岸田　ではここから、「大変だったこと・困ったこと」についても伺っていきたいと思います。闘病中、尾崎さんが特につらかったと感じたこととして、治療や後遺症に関する情報収集、そして 家族への報告や入院中のサポート（育児を含む） が挙げられています。具体的には、どのような点が大変だったのでしょうか？

岸田　では、その「大変だったこと」をどのように乗り越えていったのかについて伺いたいと思います。尾崎さんは、Instagramでの情報収集（子宮頸がんのハッシュタグ）、そして 家の整理とラベリング、さらに 娘さんの育児マニュアル作り と書いてくださいました。
　まずは、治療や後遺症についての情報収集ですが、どんな状況だったのでしょうか。

尾崎　はい。私の周りにはAYA世代──30代前後のがん経験者が全然いなかったんです。だから、治療のことも、その後の生活のことも、育児のことも、とにかく不安しかなくて。何か情報が欲しくてネットで検索しまくったんですが……Google検索って、どうしても悪い情報が多く出てしまって、どんどん落ち込んでしまいました。

岸田　鬱っぽくなってしまった、ということなんですね。

尾崎　そうなんです。経験者の方でも同じように言う人は多いんですけど……。強めの言葉や専門用語、生存率の数字ばかり目に入ってきて、読むだけで混乱してしまうんです。本当は、同世代の体験談とか、メンタルケアなど、もっと身近な情報が欲しかったんですよね。

岸田　そこでInstagramを使ったんですね。

尾崎　はい。「#子宮頸がん」や、当時あまり知らなかった「#AYA世代」で検索したら、若い方の情報がたくさん出てきたんです。写真と一緒に投稿されているので、言葉だけでは分からないことも理解しやすくて。術後の傷跡の変化や、リンパ郭清後のむくみなど、写真で見ると一目で分かるんですよ。

岸田　確かに、TwitterなどよりInstagramのほうが視覚的な情報が多いですもんね。

尾崎　はい。だからとても助けられました。

岸田　続いて、家族への報告や入院中のサポートについてですが、こちらも大変だったんですね。

尾崎　はい。これは“あるある”かもしれませんが、やっぱり家族への報告は難しかったです。私は素直に報告しましたが、反応が想像と違ったり、卵巣を取るかどうかで親と意見がぶつかってしまったり……。説得するのもすごく大変でした。同世代ならではの悩みかなと思います。

岸田　自分と周りの人の意見に差があると、心が揺れますよね。

尾崎　はい、本当に。

岸田　そして入院中の育児というところで、家の整理やラベリング、育児マニュアルを作ったとあります。これはどういうものでしたか？

尾崎　入院中、娘をどうサポートしていくか……家族が困らないように、とにかく「見れば分かる状態」にしたかったんです。例えば、近所の地図をカラーコピーして、娘のお気に入りのお店を書き込んだり、生活リズムを書いた“1日のフロー”を作ったり。保育園のルールやアレルギーの情報もまとめて、一冊のファイルにしました。家の中の物にもラベルを貼って、どこに何があるか分かるようにして。まさに“育児マニュアル”ですね。

岸田　すごい……。家族への思いやりが詰まったマニュアルですね。

【メッセージ】

岸田　3、4歳で焼き鳥が好きというのも、なかなか渋いですよね。でも、そういった好物や「ここに行けば安心」という場所まで含めて周辺地図にまとめておいたというのは、本当にすごいことだと思います。誰が育児サポートに入っても困らないように準備されていたんですね。ありがとうございます。では最後に、今この配信を見てくださっている皆さんへ、ゆうこさんからメッセージをいただきたいと思います。こちらが、ゆうこさんからのメッセージです。

尾崎　私が一番お伝えしたいのは、「今の自分を受け入れる」ということです。告知後は身体の変化があったり、仕事や友人関係にも変化が出てきたりして、いろいろと揺れる時期があると思います。でも、そのときの“今の自分”にできることを探していくことが、メンタルを保つ上でも大切だと感じました。

　完璧である必要はないし、以前の自分と比べなくてもいい。
　そのときの自分にできることに目を向けることで、少しずつ前に進めると思います。
　皆さんにも、ぜひ試してみていただけたら嬉しいです。

岸田　今の自分を受け入れる──。がんになると、そんなふうに冷静に受け止めることが難しく、気持ちがぐちゃぐちゃになってしまう方も多いと思います。

尾崎　そうですね。実際、私も最初はぐちゃぐちゃでした。

岸田　尾崎さんは、どのタイミングで“受け入れられる”ようになったんですか？

尾崎　最初の頃は全然無理でした。告知後は受け入れられなくて。でも、同じ悩みを抱えているサバイバー仲間と出会って、情報交換で安心したり、悩みを聞いてもらったり。それがすごく励みになりました。その仲間たちと短歌を作ったり、一緒に活動していく中で、少しずつ自分を受け入れられるようになった気がします。

岸田　周りのサバイバーの方々との出会いが、大きな支えになったんですね。この動画をご覧いただいている方々も、同じように、誰かの経験や言葉に触れることで“自分を受け入れるきっかけ”が見つかるかもしれません。インスタで検索するのも一つの手ですし、情報に触れる手段はいろいろあると思います。ぜひ皆さんも、自分と同じ境遇の人の声に触れながら、少しずつ自分を受け入れていく感覚を大切にしていただけたらと思います。

岸田　そして尾崎さん、本日は子宮頸がんのお話や『あの風プロジェクト』についても詳しく語っていただき、本当にありがとうございました。それでは、がんノートmini、今回はここまでとさせていただきます。

岸田　皆さん、バイバイ。またね。