性別 | 男性 |
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がん種 | 胆管がん |
ステージ | 4 |
罹患年齢 | 30代 |
インタビュアー:岸田 / ゲスト:西口
【トークセッション】
岸田 西口さんにたくさん質問を頂きましたので、これに回答する形で進めさせていただきます。
子どもへの伝え方について
岸田 子どもへのがんの伝え方で、いい方法、工夫があれば教えてください。
西口 これは難しいな。それまでの関係性によると思います。子どもと普段、どういう距離感でいるのか、状況とかが人によって全然違うと思うので一概には言いにくいですが、僕が思うのは子どものことを考えて行動したことは、子どもは分かってくれると思う。だから正解はなくて、子どものためにこういう伝え方をしたんだということが伝われば、子どもは分かってくれると僕は思います。
仕事について
岸田 どれくらいの頻度で、お仕事されていますか。体調が安定している時にする感じでしょうか。
西口 仕事は基本的にシフトなんですけど、シフトを僕が勝手に入れていくという感じです。大体週2日、3日のシフトを、どんどん予定に入れていく感じですね。
岸田 具体的にはどのような仕事内容ですか
西口 僕はもともと営業だったんですが、今は人事に変わって、主に採用の仕事をしています。面接が主な仕事なんですね。提出した出勤日にアシスタントの人たちが面接をどんどん入れてくれて、それに従う感じです。
罹患してからの不自由さ
岸田 がんになって不自由を感じたことは。
西口 あんまりないです。ただ通院があるので、長期でどっかに行くみたいなことはなかなか難しい。でもそれって別にがんだからどうだっていう話でもないですよね。制約を受けているわけでもないけど、当然、爆弾があるという気持ちはあるので、無理しちゃいけないなという気持ちはあります。
金銭関連
岸田 貯金を切り崩していく生活に対して奥さんが反対しなかったか、また仕事は体調が安定してできる感じなのか。仕事の形態を変えたことで収入がどれくらい減ったかとか、お金の周りについて具体的に教えてください。
西口 働き方を変えることに妻は反対というよりも、その後の生活について心配していました。親も心配して、いきなり収入をゼロするのではなく、段階的にしたほうがいいじゃないかとアドバイスをしてくれました。僕自身の生活も当然あるけれど、家族の生活もあるので、まず、今生活を維持しながらどこまでやっていけるのかが問題でした。でも貯金なくなる前に、家族の生活を守る為なら何でもする、という姿勢を見せ続けることが大事だと思います。僕がやりたいということに対して、妻は不安だけど無言で応援してくれています。
岸田 いい奥さんですね。具体的には収入どれぐらい落ちましたか。
西口 入院をして、営業でもなかなか成績も出なくなった翌年の年収は半分ぐらいなりました。今は減ったその時以上に減っています。3年前に比べると、3分の1に近いぐらい。
岸田 徐々に仕事に復帰したり、いろんなことを少しずつ頑張っていくしかない。本当に大変ですね。
病気を子供に伝えることについて
岸田 がんであることを子どもに伝えたことで反抗的な態度を取られたという例を聞きましたが、どういうことでしょうか。どうして反抗的なのでしょうか、という質問についてはどのように思われますか。
西口 多分、理解できないのでしょうね。なんで自分の親がそうなるんだとか、何か家族の問題が原因としてあるんじゃないかとか、何か悪いことをしてたからなんじゃないかとか、何かしら因果関係を考えてたりすると、問題を処理し切れなくなってきて、非行に走っちゃうのではないでしょうか。でもそういうことって病気に関わらず起こり得ることだと思うんですね。自身の親ががんだということを受け容れることは子供にとってそれくらいショックが大きいことなんです。僕の場合は子どもが小さいので、反抗的になるっていうことはなかったですが、物を投げつけたりとか、やり場のない思いをぶつけるお子さんも当然いらっしゃるし、思春期だと本当に目に見えてそういう心が出てくるので、やっぱりそれまでの親子や家族の関係性がすごく大事だと思います。普段からサバサバした関係性の中であれば、そういう精神的な話をしたとしても分かりあえる可能性がある。
岸田 それまでの家族間の関係性や信頼構築が大事だということですね。
励まされた言葉、救われたエピソード
岸田 周りの方、ご家族や医療従事者などから、掛けられた言葉に励まされた、救われたというエピソードがございましたら教えてください。
西口 僕は何も言わないっていう事が結構うれしかったです。特に家族は、変に言葉にしようとせずに普段通りに接してくれたのが良かった。キャンサーペアレンツの活動についても、頑張れって言われなくても、言わなくても、応援してくれてる感が伝わってきます。
キャンサーペアレンツについて
岸田 キャンサーペアレンツというネット上のコミュニティーを考案したきっかけを教えてください。
西口 僕自身の仕事がネット関連だったので。僕らの世代はみんなネットも使えるし、スマホも持っている。そういうインターネットツールをうまく使ったほうが患者同士でつながれるんじゃないかと思ったし、当時はそういうネット関連の患者会が少なかったので立ち上げました。
身体的な不安
岸田 何か生活上の身体的な心配とかが今ありますか。
西口 普段の生活の中で急に起こる胆管炎や就寝前などに急に高熱が出たりするのが怖いかな。油断しているとだめですね。
一番の楽しみ
岸田 一番楽しいことは?
西口 やっぱり、おいしいもの食べることかな。おいしいものを食べられるって、すごい幸せなんですよね。入院したり、手術をすると食べられないし、退院してすぐでもあれは食うなとか、あれは飲むなとか、結構たくさんの制限がある。半年ぐらい経つと普通の食事に戻っていくんですけれど。そういう経験からか、入院してから半年くらいずっと食べられなかったラーメンを食べた時の、あの感動は鮮明ですね。
岸田 食べるっていうのは、本当に患者にとっても楽しみの一つでもある。そんなエピソードからも、
西口さんが前向きにがんと闘ってこられているという印象を受けます。人間関係に助けられたというエピソードがありましたが、
西口さんはもともと明るく前向きな性格だったんですか。
罹患してからの性格の変化
西口 僕はもともとですね。性格ってそんなに急に変わらないと思うし。ただ、内向的だった人が病気を通じてポジティブになるっていうケースはあると僕は思うんですよね。ネガティブ思考だから病気になって不安が増したり、病気のことを悪いように考えてしまうからネガティブになってしまうなら、明るく楽しく闘病したほうがいいと、楽観的に考えればいいんじゃないかなと僕は思います。
岸田 こちらに関して歴代ゲストのミヤギくんに意見を聞いてみましょうか。
ミヤギ 病気になってから、いろんな困難があり傷つくこともありましたが、それを乗り越える度に、物事を前向きに考えるようになったとは、すごく思います。もともとが結構人見知りするので、人前で話すのも苦手でしたが、今は、結構友達も増えたので、これも病気になった経験からいただいたものなのかなと思っています。
死への恐怖克服・宗教観の変化
岸田 死への恐怖にはどう対応されたのか。
西口 いや、対応はできないです。死への恐怖って常にある。対応できないですよね。向き合えば向き合うほど、向き合えなくなるので、僕は死に向き合わないようにするために、仕事をしたりとか、このキャンサーペアレンツの活動したりとかして目をそらしてるっていうのは多分あると思うんです。そういうのがなくて、閉じこもっちゃうと死のことばっかりを考えてしまう自分が怖いというのは、すごくあると思います。
岸田 宗教観みたいなものってなんか変わったりしませんでしたか。
西口 あんまりないですね。僕が死んだらどんな姿になるとかは全く考えたこともないし、生まれ変わるのかとか、また同じ人と結婚するのかとか、そういうこともあまり考えたことがない。魂が輪廻するとかも考えたことないし、今この瞬間、この場にいる僕しか考えてないですね。僕が死んだら、僕という存在がいなくなるっていうことしか、死についての認識はないですね。だから僕は自身の魂みたいなものを、何かの形でこの世の中に残したいなと考えています。
岸田 今、何を残せるか。その一つのキャンサーペアレンツでもあったりということですよね。
がんという病気をどうとらえるか
岸田 子どもが病気になるほうがつらいか、自分が病気になるほうがつらいか。
西口 これは、家族が病気だったほうが絶対つらいと思うんですよね。自分自身が病気だと痛みとかつらさがあるのは当然、僕です。僕が痛みに耐えればいいし、僕は先に逝くことになる。でも残された人たちのほうが、いろんなものを背負っていかなきゃいけないってことを考えると、自分が「生きる、死ぬ」について考えてるだけじゃなくて、残される家族は自分が死んでしまってからも生き続けることを考えなきゃいけないので、それは大変ですよね。だから家族側のほうがつらいと僕は思います。だから周りを見てる限りで言うと家族のほうがいろんな悩みとか苦しみは多分あるんだろうなと思いますね。
将来の抱負
岸田 今後、来年に向けて抱負などあれば。
西口 僕が今まで元気でやってこれたのは、何かを伝えるということをやってきたからだと思っています。この後の1年もいろんな活動を通じて、いろんなことを伝えていきたいし、いろんなことをどんどん吸収して、また来年につなげていきたい。この歳でも全然成長できるし、元気に1日でも長く生きるということが、僕の中では本当にすごく大きいテーマなので、そこに貪欲にチャレンジしていきたいです。
岸田 行動すれば変わるということでね。
西口 がんノートの活動も僕はそこに価値があるんじゃないかなと思ってます。ありがとうございました。