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インタビュアー:岸田 / ゲスト:西口

【告知と手術】

岸田 どうやってがんが発覚して告知されていくのかお伺いします。

西口 まずは体がしんどいしんどいなということが最初の発端です。

西口 症状としては、そういうしんどい、疲れが取れないということと、下痢です。

西口 本当に数カ月単位でずっと下痢が続くんですよ。それが続くと体重が減るんですよ。半年で6キロ。

西口 それが半年間でそういう症状が出てきたので、ちょっとおかしいなということで、病院に行きました。

西口 そこでは何も分からないから、検査しましょうかということで、内視鏡の検査をするんです。それでも異常がないと生検という検査をやったんです。

西口 そのときの生検の結果を聞きに行ったときに、お医者さんと目が合って、僕の白目が黄色くなってたんで。

西口 それがいわゆる黄疸という症状で、「それは良くないので、大きな病院に行って精密検査をしたほうがいいです」と言われて、すぐ、翌日「入院してください」と言われました。

西口 大きな病院に行って検査入院をしたらすぐ、西口さんはがんですといわれました。心の準備は、一切ないですからね。

岸田 治療のことについてお話をしていただきたいと思います。

西口 まず、がんの告知を受けて、2週間後に手術しましょうと。

西口 大手術をする予定だったので、家族総出でだったんですよ。僕も手術室に入っていって、頑張るぞといって、気付いたら昼なんですよ。

西口 その後、集中治療室から出て、病棟に戻って歩く練習をして、術後3日目ぐらいによちよち歩きで診察室に入っていって、手術の内容を聞きました。

西口 「西口さん、ちょっとおなか開けたんだけども、もともとがんがあると思っていた胆管の所のがんだけじゃなくて、腹膜とリンパにもがんがあって、ちょっと取り切れませんでした。おなか開けて取ろうと思ったんだけども、簡単な処置だけしておなか閉じました」というような話だったんです。

西口 「いわゆる医学的にはこういう手術で取り切れずに、治療が抗がん剤だけになるということをステージ4っていうんです」って言われたんです。

岸田 ステージ4ってすんなり受け入れれるものなんですか。

西口 いや、受け入れるというか、うわあ、もう終わったっていう感じです。

西口 最初はがんの知識全くないわけですよ。最初の告知っていうのは。

西口 でも、手術まで2週間あるんでいろいろ調べますよね。

西口 調べていくと、これ、めっちゃやばいがんやんということが一つ分かってきたのと、いわゆる早期で見つかって治療ができたとしたら長生きできるかもしれないみたいなのはあったんです。

西口 ただ、進行が早いというか、症状が出たときには結構進行してますみたいなのとか、治療法がなかなか少ないので予後は悪いですよみたいなことが書いてあるわけですよ。

西口 だから、まずは手術でがんが取り切れてくれっていう感じでした。

岸田 その次の治療の選択肢として、抗がん剤スタート。

西口 そうですね。いわゆる次の治療しかできませんという話だったので。

西口 しかも標準治療っていうのはもう種類がないんです。

西口 だから、これをやりましょうという一択でした。標準治療を入院しながらちょっと様子見てやりましょうかと。

西口 2、3回、点滴の抗がん剤をした後は退院をして通院でやりましょうとすぐに切り替わっていきました。

【術後の抗がん剤治療】

岸田 抗がん剤スタートしていって、2015年5月。すぐ復帰したんですか、会社に。

西口 2月に手術をして、3月から抗がん剤が始まって、3月の末には退院したんです。

西口 そこから通院しながら抗がん剤をして、行けそうだなということだったので、ちょうどゴールデンウィークの直前に会社に復帰をしたという感じです。

西口 週1回、病院に行って抗がん剤の治療をすると。

西口 ずっと、最初の抗がん剤の、いわゆるファーストラインという、最初の治療を1年間やってきたんです。

西口 1年間やってきたんですけど、このときにアレルギー反応が出たんですよ。

西口 点滴してるときに、全身が真っ赤になって抗がん剤ストップ。

西口 すぐアレルギーの薬を入れて、ちょっとこの抗がん剤はもう使えませんという話になって。

西口 その次の治療をどうしますかと主治医から提案されたんですよ。

西口 その病院では若い胆管がんの患者さんの症例がすごく少ないから、いろんな人たちの意見を聞いたほうがいいかもしれないと提案されて、いわゆるがん専門病院にセカンドオピニオンに行ったんです。

西口 行ったんですけど、結局は元の病院と同じ治療を提案されました。

西口 セカンドオピニオンに行った病院ではびっくりされたんですよ。送ったカルテ情報だけ見てると、めちゃくちゃやばいわけですよ。

西口 こんな状態でアレルギーが出て、めちゃくちゃやばい。

西口 僕はこの1年間頑張ってきて、意外にいけそうとかって楽観的なモードに入りつつあったんだけども、がんの専門の人から見たら、この状態はもうやばいと。

西口 また客観的に、僕はやばいんだということを改めて感じたわけです。

西口 時間も含めて、そんな余裕ないなということを改めて感じたので、この環境を変えようと、この活動をちゃんと本腰入れてやりたいということで、この2カ月後に勤めてた会社の時間をちょっともう変えようと思ったんです。

西口 フルタイムのところから時間をちょっと減らして、この活動のほうに時間を割こうということで、環境を変えるわけです。

岸田 病院側からセカンドオピニオンを提案してくれるのはありがたいですね。

西口 いや、これはありがたかったですね、本当に。

西口 僕もセカンドオピニオンっていうのはあるってちらっと聞いたことあるぐらいの知識しかなかったんですけど、主治医から言ってくれたのはすごいよかったです。

岸田 主治医との信頼関係を築く上で心掛けていたこととかありますか。

西口 いや、特にないんですけど。たまたま年が近かったというのはあるかもしれないです。

西口 年も近いし、出身が僕大阪で、主治医が京都の方だったんです。

西口 共通点があったりしたので、そういう意味では、主治医だけじゃなくて、化学療法をやってるときの看護師さんとの関係性とか、そういうのも、全部含めてなのかもしれないです。

岸田 看護師に求めることは何でしょうか。

西口 やっぱり主治医との会話の量も質も含めて限界があるので、そういう意味では看護師さんとの会話の中にこそ本心が実は隠れてるかもしれないというのはあるので、そういうのをうまく引き出せられるような看護師さんがいたら、もっと気持ち良く通院ができるとか、病院に来れる患者さんが増えるんじゃないかなと思います。

【治験とゲノム検査】

西口 セカンドラインっていう治療を2年ぐらい続けていくんです。

西口 またその治療も効かなくなって、がんがちょっと大きくなってきましたねと。

西口 この間も3年以上たってるので、主治医のほうから治験をやってる病院にセカンドオピニオンに行ってみたらどうかという、結構、具体的な提案を受けたので、いろいろ治験を調べて、治験をやってそうな病院に、セカンドオピニオンに行きました。

岸田 そのとき、やってる治験はどうやって調べるんですか。

西口 知人に聞きました。

西口 治験に詳しい人がいたので相談したら、幾つかあるよと。この病院でやってるらしいよという話だったので、その病院にセカンドオピニオンに行きました。

岸田 どう提案されましたか。

西口 行ったら、治験が三つありますと。検査が必要なので、入れるか分からないんだけども、三つのどこかには入れるんじゃないですかという話で、検査してもらったんです。

西口 そうすると、一つ入れるのがありましたと言われたので、入りますということで、もといた病院から治験をやってる病院に転院をしてそこで治験をスタートすると。

西口 1年、薬を投与したんですけど、またちょっとがんが大きくなってきてるということで、効果がないということで、昨年末に治験が終了しました。

岸田 治験を受けてみて、こう思ってたけど実際こうやでみたいなこととか。

西口 治験っていうのはまだ世の中に出ていない薬、出ててもこの病気に効くかどうかがまだ分からない薬を試しで使うと。

西口 だから治験のときはコーディネーターさんがいて、細かく情報を収集する。

西口 要は治験の情報を集めなきゃいけないので。主治医とは別で体調とか副作用の情報とか事細かく聞いてくれたりとかするんです。

西口 それは僕もすごい言いやすかったので、あ、なんかこんなふうに伴走してくれるんだっていう安心感とかすごい楽でしたね。

西口 コーディネーターさんはすごい手厚くフォローされてる感はありました。

岸田 三つぐらい治験があった中で、その中の一つが適用できるとかあったじゃないですか。それって、全員が全員入れるっていうイメージじゃないんですけど、やっぱりそうなんですか。

西口 条件がありますからね。

西口 三つのうちの一つに入ったんですけど、僕はタイミングがちょうど合ったということで入れたんです。

西口 前の病院の主治医が、この次の標準治療あってそれをやってもいいんだけど、それをやってしまうと入れない治験があるかもしれないから、この治療をする前の段階でセカンドオピニオンに行ったほうがいいんじゃないかということで、そのタイミングで言ってくれたんですよ。

岸田 ちゃんと調べてくれて、勉強されてるお医者さんですね。

西口 たまたま僕は治療のタイミングと募集してるお薬の両方のタイミングが合ったので、治験に入れたんですよ。

岸田 2019年11月ゲノム検査。

西口 標準治療がもうないので、遺伝子検査をして、標準治療以外のところでも何か遺伝子に合致をした薬があるのかもしれないっていう可能性です。

西口 可能性に懸けて生検をして、遺伝子検査をしたわけです。結果的には、僕の場合、がんを引き起こしている細胞の遺伝子異常が見つからなかったんです。

西口 なので残念ながら遺伝子異常に合う薬での治療はないですということで、そのタイミングで標準治療終了。

岸田 ゲノム治療でないですとなって。

西口 現在は今までやってきた治療組み合わせてやってるんです。

西口 でも、過去にそれは効かないから次のステップに行ってるので望みは薄いわけです。

西口 ここの瞬間瞬間に新しい薬が出てこないとも限らないので最後かどうかは分からないんですけど、現段階では最後かもしれないよねという感じです。

【緩和ケアと現在】

岸田 2月、緩和ケア?

西口 そうです。ソーシャルワーカーさんと話してくださいと言われて、今後のことについて話をするというような感じの話し合いを持ったということです。

西口 いわゆる緩和ケア治療、あとは緩和ケア科とか、そういうことについて改めて僕自身も理解をして、今の治療が終わっていったら、次どうなるのかということを、話を聞いたという感じですね。

岸田 どんな緩和ケアしてるんですか、今。

西口 僕がソーシャルワーカーさんと話をして聞いたのは、治療が終わってからどんなふうに過ごしますかと。

西口 今のうちから家族含めて、ご自身も含めて考えて話をしておきましょうねっていう話をしたんです。

西口 ここで言う緩和ケアっていうのは、入院とか通院とかするんだとしたら、緩和ケア科とか緩和ケア病棟とかっていうのがあるので、どこの病院にどういう科があるのかとか、どういう受け入れをしてくれるのかっていう話をしてくれたわけです。

西口 今、緩和ケア科とかって言ってるのは終末期の医療みたいな感じで見られるかもしれませんけど、例えば副作用がしんどいとか、がんの症状が出てきて痛みがあるとかっていうときに、いろんな薬とか出ましたよねと。

西口 そういうのは全部緩和ケアですという話なんです。

西口 だから、僕はこの5年間、治療と並行して緩和ケアもずっと受けてきたわけです。

西口 治療以外の、治療を終わった後の緩和ケアのみになったときに、どういう過ごし方をしますかという話なんです。

【キャンサーペアレンツの立ち上げと今後】

西口 キャンサーペアレンツ。

西口 僕自身が、がんを抱えたお父さんという立場で、そういうお父さんとかお母さんって、抱える問題として他の患者さんとはまた違うものがあるんじゃないかと思い、家族とかお子さんのコミュニケーションを中心にした、インターネット上のコミュニティーを立ち上げて運営をしています。今、3500人ぐらいです。

西口 最初の復帰してから半年ぐらいたったときに、たまたま「今までの治療とかの中で困ったことがあるんだったら、そういうことを事業として立ち上げてみたらどうなの」って言う友人がいたんです。

西口 たしかに今しかできないし、僕の経験を元に何かできるんだとしたら、それはやっぱり僕にしかできないことなんだから、考えてみようというのが一番最初のきっかけでした。

西口 当時、小学生の娘が1人いたんですけど、まだ言えてなかったんですね、病気のことを。

西口 やっぱり家族とのコミュニケーションって悩むなみたいなことを考え始めて。

西口 恐らく同じことで悩んでる人はいるんだろうなと思ったとき、ネットでそういう場所をつくって、匿名でも何でもいいから集まって話し合えるような場所があったらすごくいいなと思って立ち上げたのが、このキャンサーペアレンツです。

岸田 お仕事の兼ね合いとか、そういったところは今、どうされていますか。

西口 職場には相当融通を利いてもらっていて、体調悪いときは半休もらったりとか、お休みもらったりとか、本当に迷惑掛けながらですけど、何とか仕事を続けてこれてるという感じです。

西口 僕の今いる会社は、できて間もないときに入った会社で、そういう意味では今に至るまで苦楽を共にしてきたんですそういう経緯があって、僕はがんになって、会社も応援してくれて、僕も会社のために何かしたいっていう、そこでつながってるので。

【家族との関係】

岸田 ご家族との関わりは変化とかありました?

西口 多分、僕自身はそんなに変化を意識してるかというと、そんなことはないんですけど、でも子どもに対しての接し方。

西口 小学校5年生で大人になりかけてる途中なんですけど、まだまだ子どもなんですよ。

西口 もし僕がいなくなったとしたら、ずっと手がかかる子どもであっては大変だし、もし2人になったとしたら、一人の大人として生きていってほしいと僕は思ってるので、そういう意味では一日でも早く、自分のことは自分でできるようになってほしいと思ってるので、厳しくなったかもしれないですね。

西口 当たり前のことをちゃんとやってほしいっていうことは結構口酸っぱく言うようになりました。

岸田 もう娘さんはもちろんがんは。

西口 知ってますし、活動も当然知ってます。今の僕の中での問題というか、どうしようかなと思ってるのは、いよいよ死が近づいてきたってことに対して、子どもにどう伝えるかですね。これ、難しいなというのは、改めて感じてますね。

岸田 奥さんに対してはざっくばらんに。

西口 話はしてますけど、ただ、感情を表に出すっていうのがそんなに得意じゃない。

西口 家族内でのコミュニケーションってやっぱり簡単じゃないなと思います。強くありたいとかっていう僕の思いもあるし、多分、妻は妻で動揺してはいけないとか、そういう妻としての振る舞いとか考えてると思うんです。

西口 そういうのがあればあるほど、コミュニケーションがスムーズにいかないこともあったりするので。

【今,闘病中のあなたへ】

西口 「行動したら変われる」。

西口 キャンサーペアレンツもそうだし、会社に対して、社長に話をしたこともそうだし、セカンドオピニオンとかもそうなんですけど、やっていくといろんなチャンスって転がってるんですよね。

西口 そういうものを一つ一つ、やってみようというふうに思ってやってみたら、結果的にいい方向に変わってきたっていうのがあるので、やってみるっていうのは一番いいんじゃないかなというふうに思って書きました。

【キャンサーペアレンツの皆さんへ】

西口 これ、僕らが活動していく中で、特にがんのお父さん、お母さんの皆さんに常に呼び掛けてることなんですけど、別に僕がつくったからといって僕が全部やって引っ張っていくみたいな、そういう集まりじゃないんです。

西口 みんなでつくってみんなで楽しくやっていったほうがいいよねというふうに思ってる。

西口 仲間勝手につくってやっていきましょうよみたいなフラットなキャンサーペアレンツになったらいいなということで、こういうメッセージを常に皆さんとは共有をしている。

西口 ちょっと新しい、みんなが主役ですみたいな、そういうコミュニティーになったらいいなというふうに思ってます。

西口 要はここに仲間がたくさんいるわけです。

西口 なので、その仲間と一緒に何かをやってみましょうという機会は常にあるので、やっていきましょうということですね。

【家族へ】

西口 可能性は無限。

西口 これ、娘と妻に対してなんですけど、僕が思ってるのは、夫ががんでとか、お父さんががんでとか、いつか分かりませんけども遺族になると。

西口 お父さんは私が小さいときに亡くなりましたみたいな事実ができるかもしれないですけど、それに引っ張られてこういうことはしてはいけないとか、そういうのは不謹慎だとか、こういうことはお父さんがこうだったからできないんだとか、夫がこうだから私はこんなめっそうもないとか、そういうことを思ってほしくないわけです。

西口 逆に、こういうのをバネにしてやってやろうみたいなふうに思ってくれたほうがいいぐらいで、そういう意味では自分でそういう未来の可能性を狭めるんじゃなくて、逆にいろんなことできるんだと。

西口 僕は切に思ってます。

西口 ある会で妻が、もし僕が亡くなった後に、妻に対してどういうことを望みますかみたいなことを聞かれたんです。

西口 僕は退院してすぐに「もし僕に何かあったとしたら、僕のことは気にせず再婚していいよ」って言ったんですよ。

西口 妻は何も、首を縦に振るにも、ノーリアクションだったんですけど。

西口 それをその会の中で、女性の方がいらっしゃって、その方が、「女性からしたらそんな、あなたの死後の世界のことをわざわざあなたに指示されるなんていい迷惑です」と。

西口 どきっとしたんですけど、逆に言うとそれだけ女性って強いのかなって思ったときに、そんなことは別に心配しなくても、彼女が思うように生きてくれたらそれでいいだけの話なので。

西口 って思ったらちょっと気が楽になったんですよ。

西口 そういうことも含めて可能性を狭める必要はないということが言いたい。

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