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インタビュアー:岸田 / ゲスト:齊藤

【治療】

岸田 それでは、がんノート、きょうもスタートしていきたいと思います。きょうは齊藤かおりさんです。公務員の齋藤さんなのですが、乳がんの経験をなさりまして、そのときはステージが2ということ、そして告知年齢が29歳、今の年齢が32歳。治療は手術とホルモン療法を行っている、というような形になります。きょうは齋藤さん、よろしくお願いします。

齋藤 お願いします。

岸田 ではちょっと、齋藤さんに、早速なんですけれども、闘病歴のほうをお伺いしていきたいなと思います。

齋藤 まず、2016年の5月、28歳のときに乳頭にへこみが見られたので、地元の乳腺科のあるクリニックで超音波検査を受けました。

齋藤 そのときは年齢的にも乳腺炎なんじゃないか、ということで様子を見てくださいと言われました。

齋藤 様子を見て1年ぐらいたち、もう一度、乳腺科のあるところ、別のクリニックなんですけど、受診をして、触診を受けて、いろいろちょっと、あれって思うところがあったのか、検査を立て続けに続けていき、生検をして、最終的に乳がんが分かりました。

齋藤 告知を受けて、そちらの病院では手術ができないので、その先生がもともと勤められてたところが総合病院だったんですけども、そちらで2017年の7月に手術、全摘の手術を受けて、なるべく負担が少ないということで、同時再建の手術を受けました。

齋藤 8月からホルモン療法、閉経前なのでリュープリンとタモキシフェンで続けていこうっていうことで現在に至ります。

齋藤 再建をしてるんですけど、翌年の3月に乳房の再建をして、日帰りですね。12月に乳頭のほうの再建も、タトゥーと、乳頭そのものも作りました。

岸田 28歳のときにクリニックで超音波検査するときは様子見だったと、特にそこでは異常は見つからなかったということですよね。その後、1年後ぐらいに、いろいろまだおかしい、ということで、触診だったりとか、いろいろしてもらって、そして告知を受けたんですよね。告知受けたときどうでした。やっぱショックな部分ってありました。

齋藤 コンスタントに検査検査って続いてるので、もしかしたらっていうものは感じていて。でも、一か八かってかワンチャン、そうでないといいなって思ってたんですけど、あ、やっぱりかっていう感じで。

岸田 やっぱりかって感じでね。ワンチャンがなかったって感じね。

齋藤 そうですね。

岸田 その後、総合病院に入院して手術、全摘、同時再建。これ結構大掛かりな手術とかでした。

齋藤 大掛かりだったのか、ちょっと分かんないんですけども。温存にするかどうするかって話を最初、先生と話すんですが。

齋藤 年齢的なこともあって、部分切除でもいいんだけど、場所が乳輪の近くに、がんがあったので、だから下手に取って後から形くずれちゃう場合もあるから、潔くね、全部取って、作り直すことが、今、保険も利くから、というふうに先生、諭されて、じゃあ作るかと思って、全摘を選びました。

岸田 確かに、下手に形がくずれるんだったら、全摘して、同時再建・・・。

齋藤 中には壊死とかしてしまう人もいるよと、いろいろ写真を見せられて、ちょっと脅されたかのような感じになって。

齋藤 のちのち、そういうふうになるかもしれないんだったら、スパッといこうと。2択ですよね、だから。2択のうちの一つを選んだって形で。手術時間としてはそんなに長くなくて4時間ぐらいだったかなと思います。

岸田 その後、ホルモン療法がスタート。リュープリンとタモキシフェン、二つ。どっちも錠剤とか、もしくは注射とか。そういったところに関して。

齋藤 タモキシフェンが錠剤ですね。毎朝1粒ずつ飲むやつで、リュープリンが皮下注射っていって、おなかに刺すものです。

齋藤 いろいろ期間があるんですけども、おなかに刺して、それが1カ月とか3カ月とか、そこにお薬が留まるんです。で、こうじわじわと効いていくようなものですね。

岸田 今もやっているということですね。

齋藤 やってます。

岸田 副作用とか後で聞きたいと思うんですけれども。その後、手術、乳房再建。同時再建したときは、また、そのときも乳房再建って書いてるけど違いとしては。

齋藤 違いとしては、まず全摘して同時再建のその再建、何が入ってるかというと寝て起きたときに多少の膨らみがあるから、あんまり喪失感はないんですね。そのなんていったらいいんだろう、水まんじゅうみたいな感じのもので。

岸田 分かりやすい。

齋藤 ティッシュ・エキスパンダーって名前なんですけど、そちらが入れられます。全部取るので皮膚がやっぱりこう、伸びちゃうというか、固くなっちゃうので、それを定期的に生理食塩水を入れていき、シリコン入れるときまでに、ぱんぱんに膨らませ、皮を伸ばしておくためのものが入ってるんですね。

齋藤 伸ばしきったところ、約1年か半年ぐらいかけて、伸ばしきったところに、大丈夫なほうのおっぱいと同じぐらいの大きさのシリコンにバックの入れ替えをします。それが乳房再建ですね。

岸田 2018年3月で入れて、日帰りで再建手術をし、その後、ちょっと僕、見慣れないんですけど、タトゥー。乳輪形成タトゥーなんてあるんですね。

齋藤 はい、あります。しかも音がすごいっていう、何かクセがすごいみたいな感じの。

齋藤 タトゥーがすごい、そう、音がすごい。これ自費診療になるんですけど、無事なほうの、お胸の色に、一人一人に、こう色を調整してくれるんですね。

齋藤 それを入れて、入れ方はその、入れ墨と同じなんですけど、こうガリガリガリって、部分麻酔で入れていくので、すごいやってる音がする。それを聞きながら、痛くないんだけど、痛い音がするから、感覚としては痛いっていう感じでした。

岸田 そんな音がするんですね。ガリガリとか。

齋藤 ガリガリっていうかブイーンみたいな。ずーっとそれが続く。先端がすごい細かい針が密集してるような針で、こう色を入れていくので、ずーっとそのチクチクチクチクって痛みがあるんですけど、音は、ものすごいことをしている音がするんですね。何をされてるんだろうっていう感じになりました。

岸田 結構すぐ終わるんですか。どれぐらい。

齋藤 でもそんなに時間かかんないですね。

岸田 4時間レベル?

齋藤 いえ、2、3時間。3時間もかかんなかったかな。なんかあっという間です。

岸田 その後、日帰り乳頭再建。乳頭再建もあるんですね。乳輪作ってから、その後、付けるっていうことですか。

齋藤 付けるというか立てる。

岸田 立てる?

齋藤 私の受けた手術の方法は、まず先ほど話した乳輪で輪っかを、色を入れてくじゃないですか。

齋藤 その後にまた、タトゥーで、三菱の三角のマークありますよね、それを上に、乳輪よりもちょっと濃い色で入れていくんですね。それを切り開いて。

岸田 立てんの?

齋藤 そう。で、くりくりって糸でこう、立てるので。1回立てたものがつぶれてしまうと、また修復が難しくなるから、つぶれないようにしばらくこう、イカリングみたいなスポンジを術後1年ぐらい当てるんですよ。

齋藤 うつ伏せ禁止で。せっかく起こしたものを、くしゃってなっちゃうじゃないですか。

岸田 じゃあ三菱のマークでそれを立てる。それでその中にイカリングみたいなの入れて。

齋藤 入れないで上からかぶせるんですよ。立てるじゃないですか、ねじって立ち上げたものがつぶれないように、こうガードする。

齋藤 立てた高さよりもスポンジのほうが高さがあるから、それでつぶれないようにっていうことをしてました。

岸田 勉強になります。ありがとうございます。

【大変だったこと】

岸田 その治療を行ってきて、今はホルモン療法でされている、ということなんですけれども、その治療も含め、困ったこととか大変だったことを教えて頂けますか?

齋藤 入院中のことなんですけども、手術で全摘した以外にセンチネルリンパ節っていうのをやって、リンパ節に転移がないかっていうのを見る手術なんですけど。

齋藤 それでリンパを何本か取っているので、術後、なんかずっとこの辺、腕がピリピリピリピリしびれていて。

齋藤 なので、それがものすごい、多分後遺症になると思うんですけど、それが嫌で。夏だったっていうのもあって、アイスノンみたいなやつ、冷やし枕で、ずっとここを冷やしてました。

齋藤 冷やすより温めたほうがいいっていうのを、のちのち聞いたんですけど。

齋藤 あとは、ドレーンですね。ドレーンって廃液を流すものなので、それを首からこう提げてなきゃいけないんです、外れるまで。

齋藤 それを付けながら生活するので、まず管を流れてくる色が生々しいじゃないですか。見ながらご飯食べたりとか、なかなか外れないもどかしさだったりとか。

齋藤 あとは、それがあると、下半身しか洗えないので、なるべくここら辺、おなかまで洗いたいじゃないですか、ベタベタするし。ひもをちょっと、ちょっとずつちょっとずつ短く調節しながら洗ってみたりとか、いろいろしてましたね。

岸田 そうね、いろんな管につながれるからね。それはちょっと工夫しながら、やったって感じですね。そんな中で、いろいろ、ホルモン療法とかもやってたと思うけど、副作用とかあります?

齋藤 あります。

岸田 例えば。

齋藤 治療が始まるのが退院後なので、入院中は分からなかったホットフラッシュだったりとか、体重が増えたりとか、関節痛くなったりとか。

齋藤 いろんな、真夏プラス副作用でめっちゃ汗でる、汗で冷やされる、風邪ひきやすい、ていうもろもろがすごく辛くて。冬でも汗かくので、あの人めっちゃ汗かいてるんだよっていうその視線が痛かったりとか、いろいろですね。その副作用で若年性の更年期障害みたいになるんですよね。

齋藤 なんですけど、人に話しても、またまたーって言われたりとか、怠けてるみたいに思われがちだったりとか、なかなか理解してもらいづらいってところが、ちょっとしんどかったですね。副作用にプラスしてしんどかったことではありますね。

岸田 患者同士だとね、あるある、やねんけどね。治療費とかはどうやって捻出しました? 保険とか入ってました?

齋藤 保険は社会人なったとき、今のお仕事になったときに、ちょうどその保険の勧誘みたいなのがあったので、それに言われるがまま入ったんですけど、でも、がん保険は入ってなかったので、丸々賄えるほどは出なかったんでませんでした。

齋藤 でもおおむね、ベッド代の差額とか、そういうのは保険のおかげでなんとか、相殺できるくらいにはなったんですけど。

岸田 全部は賄えなかったけど大半は賄えたって感じ? 治療の。

齋藤 大半は賄えました。

岸田 良かった。さっき聞いたら保険入ってすぐに、がんになったんですって?

齋藤 そうですね。今のお仕事を始めたのが27歳ぐらいのときで、そのときは、がんになるとは、まさかって思うじゃないですか。

齋藤 入って、女性特約とかも勧められたので、のちのちなるだろうな、と思って入ったんですけど、がん保険は入れてなかったのに、社会人2年目にして、がんが分かって、入れとけば良かったって感じ。

齋藤 いろいろその、がん保険のCMとかいろいろ見てたのに、と思ってすごく悔しい思いをしました。

齋藤 なってからだと入れないので、5年たたないと。だからすごいもどかしいですね。後何年とかカウントダウンしながら、今の保険はちょっと辞めて、その治療特約とかがある保険に今後変えたいなって思ってます。

岸田 いろんなね、そのとき入っておけばって、みんな思うからね。

【工夫したこと】

岸田 闘病生活でいろいろ工夫されたことがあったと思うんですけど、この写真をお見せしてもいいですか。こちらの写真。工夫したこと、なんか意味深な写真なんですけど大丈夫ですか。

齋藤 物理的な工夫したことは先ほどお話ししたんですが、精神面で工夫したこと何かなって思って。

齋藤 治療を始めてから、がんだからとか、お薬飲んでるから、だるさがあるから、とかじゃなくて、やっぱり行きたいって思ったときに行かないと、そのチャンスってどんどん流れてっちゃうと思うので。

齋藤 ライブとか好きなんですよ、行くのが。きょう着てるのも好きなアーティストさんのシャツなんですけど、行って、好きなアーティストさんのライブに行った帰りに、その曲を使っている映画の監督さんなんですね、こちら。

齋藤 お会いしたんですよ。あーって思って、え、監督さんですよねって、写真撮ってくださいって言って撮ったやつなので。すてきな彼だったらいいんですけど、全然そういうことではなく。

齋藤 お出掛けをしなきゃって思って、自分から、より、今このタイミングを逃したら多分会えないだろうなとか、ていうのを、病気になってからより一層、自分から、なるべく、ためらわずに行くようになりました。

岸田 すごい。ありがとうございます。そんな中、まとめ的なところを。治療期間が2017年8月から今まで。年齢も29歳からずっと。治療としては全摘と乳房再建と乳輪タトゥーと乳頭再建をして、ホルモン療法としてはリュープリンとタモキシフェンを行っている。治療継続中で、なのであれですよね、ホルモン療法、今10年ですもんね。

齋藤 なりましたね。最初5年って話だったんですけど。自分から聞いたんですよ、10年になったらしいんですけど、そうなんですかって聞いたら、うーん、そのほうがいいかもしれないね、どうする? って言われて、どうする? じゃあそうしましょうっていって、決めました。

岸田 合併症、後遺症で、腕のしびれ、さっき言ってもらったと思うんですけど、リンパ浮腫もあると。生命保険にも入ってて、ジブラルタさんに入っていたと、いうことですね。女性特約は付いてたけど、がん保険を付けとけば良かったみたいなね。

齋藤 そうですね。本当それは、そう思います。

【学んだこと】

岸田 かおりさんががんの経験を通して、学んだことは何でしょうか。

齋藤 できるだけ行きたいところに行く、会いたい人に会って、やりたいことをやる。

齋藤 できるだけを強調したのはなんでかっていうと、やっぱりためらうじゃないですか、ちょっとは。決意通らずに、よし行けとか、レッツゴーじゃなくて、んーどうしようかなって迷い、タイミングとかそういうのみると思うので。

齋藤 体調とかその日のコンディションとかふまえて、今なら大丈夫って思ったら、なるべく後ろ向きな気持ちにならずに、そのときの気持ちを大事にして、今だって感じで、やりたいことやったり、できること。そのときそのときに応じて、やっとくことかなって思って。

齋藤 今の体調とかベストコンディションというか、それって今しかないことだから、あとあとやろうと思っても、今よりもしかしたら具合悪くなるかもしれないし、分からないので、今を大事にしようかなとは思いました。

岸田 すばらしい。今のうちに、できるだけっていうのは大事ですよね。無理せず、そしてちょっとだけ自分のやりたいことを一歩踏み出してみるっていうね。

齋藤 そうですね。

岸田 だから、さっきの監督さんに会えたりとかもしたわけですもんね。そのTシャツが好きなアーティストさんのやつなんですね。

齋藤 それはその監督さんがいたときのライブではないんですけど、今一押しのアーティスト。

岸田 なんていうところなんですか。

齋藤 眉村ちあきちゃん。

岸田 眉村ちあきちゃん。後でググっとこう。

齋藤 お願いします。万人受けするかどうかはちょっと、分かりませんが。

岸田 じゃあ後でググってみます。ありがとうございます。きょうは、がんノートminiとして、乳がん経験者の齋藤かおりさんにお越しいただきました。きょうは本当にお時間いただきありがとうございました。

齋藤 こちらこそ、ありがとうございました。

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