目次

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インタビュアー:岸田 / ゲスト:伊藤

【オープニング】

岸田 はい。それでは、がんノートmini、スタートしていきたいと思います。きょうのゲストは伊藤さんです。よろしくお願いします。

伊藤 お願いします。

岸田 はい。よろしくお願いします。本当、すてきな場所で撮っていただいてとありますけど、これもまた後、話を聞いていきたいなと思いますが。まずは,私の自己紹介をしていきたいと思います。

岸田 岸田と申しまして、25歳と27歳で肺細胞腫瘍という珍しいがんになりました。その経験から、医療情報はお医者さんとか,医療従事者に聞いたらいいんですけれども、それ以外の情報ですね。

岸田 お金どう工面したのだったりとか、恋愛、結婚どうするのだったりとか、生活どうするの、そういった情報ってあまりなかったので、実際に患者さんに聞いて、それをみんなとシェアできたらということを思って、がんノートというものを立ち上げました。今、そのがんノート代表理事をしております。

【ゲスト紹介】

岸田 そして、きょうのゲストは伊藤未奈子さんです。伊藤さんのご出身は愛知県。そして今も愛知県にお住まいで、所属は会社員をされております。趣味が子育て、音楽鑑賞、スキンケアと書かれているんですけど、子育てということは、今、お子さんはおいくつぐらいなんですか。

伊藤 下の子が年少さんで、今年4歳、上の子が年長さんで、今年6歳、女の子です。

岸田 どちらも女の子ですかね?

伊藤 はい、そうです。

岸田 そうなんですね。今、すごいかわいい時期ですか。

伊藤 めちゃくちゃかわいいです。

岸田 何とも、あふれんばかりですね。本当に、そのかわいさが。そんな子育てもされつつですね、音楽鑑賞もご趣味ということで、音楽鑑賞、どんな音楽を聴かれるんですか、伊藤さんは。

伊藤 本当に何でも好きなんですけど、私、もともと幼少4歳とか、それぐらいからバイオリンを習っていて、高校も音楽科で、大学も音楽大学出身なんですけど。なので、結構クラシックとかも好きなんですけど。子どもの童謡とか、本当に何でも聴くのが好きです。

岸田 バイオリンを幼少期からやっていて、大学も音楽大学、出ていて、もうガチ勢ですね。

伊藤 でも、最近は全くやってないですね。

岸田 ガチ勢が音楽鑑賞って書いたらダメですって。んなことないですけど、音楽鑑賞って、ロックが好きなんですとか、ヒップホップが好きなんですっていうことを思ってたら、まさか幼少期からされていて、大学も音楽の大学でやってて、すごいな。

岸田 そんな伊藤さんなんですけれども、がんの種類が舌がんということで。そしてステージが1、32歳のときに告知されて、現在33歳。そして治療が、手術をされていったという形になります。

【ペイシェントジャーニー】

岸田 その伊藤さんの、これからペイシェントジャーニーをお伺いしていこうと思います。またグラフが出てくるんですけど、このような形になっておりますので、参考程度に見てもらえたらと思います。

岸田 早速、見ていきたいと思います。ペイシェントジャーニー。しょっぱな、下がっていって、ちょっと真ん中、上がって、その後、下がって、また上がる、みたいな。Wの字みたいな感じですね。伊藤さんのペイシェントジャーニー、ちょっとお伺いしていこうと思うんですけれども。

岸田 まず、はじめ、30歳のときに夢のマイホーム。夢のマイホーム、だから、冒頭ですごく言いたかったのが、皆さん、こちらが夢のマイホームでございます。めっちゃええ、後ろキッチンですよね。

伊藤 キッチンです、はい。

岸田 めっちゃ、おしゃれすぎる。すげえ。夢のマイホームを買われてといったところで、その後に、3年半ぶりの職場復帰ということになります。3年半ぶりっていうことは、休職されていたか、どうかされたんですか。

伊藤 そうなんです。子どもが2人いるっていうのは言ったんですけど、2人とも年がそんな離れてないんです。1歳9カ月しか離れてないので、育児休暇を2人いっぺんに取らせていただいて、3年半お休みをいただいてました。

岸田 育児休暇ってことね。育児休暇を取られてといったところで、なっていって、その後、ちょっと下がっていくんですよ。何かと言うと、舌にできものを発見ということになります。舌にできものを発見。最初、どこら辺にどんな感じでできたんですか、できものは。

伊藤 私の場合は、左側の舌の中、このサイドというか、横のあとに口内炎みたいなものができてたのを見つけたのが最初です。

岸田 舌のサイドに。

伊藤 左の舌のサイド。

岸田 左の舌のサイドに、口内炎みたいなのができてきたっていうことですね。そのときは痛いなぐらいですか。

伊藤 痛くなくて、痛みはほとんどなかったと思います。最後まで。

岸田 そうなんや。痛みなどなく、口内炎があるな、ぐらいは思っていて。その後、ちょっと下がっていくんですよね。歯科を受診していくと。これは普通に、口内炎あるから歯科に行こう、みたいな感じですか。

伊藤 ではなくて、口内炎見つけて、最初ほっといたんですけど。3週間ぐらいたったときに、ふと見てみたら、全く同じ形状のまま、大きくなったりとかもしてなかったんですけど、小さくもなっておらず、なんか変だなと思って。

伊藤 ネットで、口内炎、治らないって検索をかけたんですけど、そしたら、2週間以上続く口内炎は歯医者さんか耳鼻科に行ったほうがいいですっていうのが書かれてたのと。あと、画像も一緒にばーって出てきて、画像を見てたら、全く同じ写真が出てきたんですよ。自分のと全く同じのが出てきて、それを押したら舌がんって書いてあって。

伊藤 それを見てちょっと怖くなって、もう病院行かなきゃと思って行きました。

岸田 そりゃ怖いですよね。同じようなやつを画像で見たら、舌がんって書いてあって。そのまま歯科に行って受診すると、そこで、いろんな検査してもらえたんですか。

伊藤 歯医者さんに行ったときは、私、生まれてから一回も虫歯になったことがないんですよ。

岸田 すごい、うらやましい。

伊藤 歯が丈夫なのか、虫歯がなくて。なので、歯医者さんに行くっていうことが、本当に日常なく、産後の歯科検診とか、本当それぐらいしかなかったので、引っ越してから行ってなかったんですよ、歯医者さんに。

伊藤 近くの歯医者さんでいいやと思って行って、初めてなので問診票とか書いて、診てもらったんですけど。診て、本当にちょっと触ったかなぐらいで、これは口内炎じゃないので、もうちょっと大きい病院に行ってくださいって、すぐ言われて、紹介状を書いてもらいました。

岸田 歯科で口内炎じゃないってことはうすうす、もうそれの中で分かってたのかもしれないんですけど。そこで紹介状、書いてもらって、大学の病院に受診しに行ったってことですね、紹介状もらって。そこで生検をしていくということで、生検はもうあれですか。針刺してとか、そういう感じですか。

伊藤 切って取る、で縫う。

岸田 もう、そこを切っちゃうってこと? 本当に。

伊藤 できものをちょっとだけ切って、2、3針かな、舌を縫ってもらったんです。

岸田 生検じゃなくて、一気にやってほしい感じですよね。

伊藤 取っちゃうやつ。

岸田 そっか。生検をして行った後に、夫に言えずということで。これは旦那さんに何を言えなかったんでしょう?

伊藤 私、仕事が、生命保険会社で勤めてるんですよ。

岸田 そうなんですね。

伊藤 なので、画像で見たときから不安ではあったんですけど、生検するって先生に言われて、生検の予約を取るってなって、すぐに生検イコールがんの検査っていうのは、何となく察知して。

岸田 職業柄ね。

伊藤 そうです。なので、舌がんをすごい疑われてるんだろうなっていうのは思っていたんですけど。やっぱり主人はそういうことを知らない、知識が、そんなにあるわけではないので、何か口内炎みたいなのができてるんだよねってしゃべったときも、そうなんだ、みたいな。

伊藤 紹介状、書いてもらって、大きい病院で見てもらうことになったって言ったら、大げさだね、みたいな。本当に特に心配とかも、そんな大ごとだと思ってなかったので。生検するよってなったときも、やっぱり言いづらくて、なかなか。子どもも2人いるってのもあったし、なかなかちょっと勇気がなく言えず。

伊藤 生検の2日前ぐらいに、生検、歯医者さん、また行くんだけど、付いてきてほしいってお願いして、生検には付いてきてもらったんですよ。もらったんですけど、何の検査かも知らずに、ただ付いてきて。

伊藤 生検の結果の予約を取って、結果の2日前ぐらい、それも。あさって結果が出るから、一緒に来てほしいんだけどってお願いしたら、それは行くけど、何なんだろうね、みたいな感じで。

伊藤 軽い感じで聞かれたので、これ、いきなり舌がんって、主人に、お医者さん言ったって、ちょっと酷すぎるなって、思ってしまって。決まったわけではなかったんですけど。なので、一応、言っておこうと思って。多分、がんの検査で、結果を聞きに行くんだと思うよって一言、そこで、生検の結果が出る2日前に、初めてがんかもしれないっていうことを伝えれた。

岸田 旦那さん、びっくりじゃないですか。

伊藤 その日、多分、夜ほとんど寝ずに、ネットで舌がんについてすごい調べてたみたいで。まさか、みたいな感じではありましたね。

岸田 そうですよね。本当まさかですよね。みんな、言うんです、本当に。旦那さんに言えず、ただその後に、がんの告知をされていくということで、結果的には、がんだったっていうことですね。

伊藤 はい。

岸田 これ、一番下がってるっていうことは、やっぱり告知されて、結構きつかったってことですかね。

伊藤 私は、がんだと思ってたんです。本当に多分、1週間、2週間ぐらい前から、ほぼ、がんだろうなっていうのは、理解していたつもりではあって。だから、がんですって言われるのも、言われるだろうなと思って。覚悟をして座ったんですけど。いざ、がんですって言われたら、想像以上にショックで。もう何も考えれなくなってしまって。

伊藤 先生も、子どもいますかとか聞いてくるんですよ。言われたら、子どもの顔が思い浮かんで、涙しか出ない、みたいな。

伊藤 まだ若いよねって。結婚してるってことはお子さんいるの?みたいなことを、がんって言われた後に、先生が追い打ちかけて言ってくるので、涙しか出ず、本当にショックでした。

岸田 そうなるよね。本当に谷の底みたいな感じになっていって。そこのときに、しかもがん専門病院で検査をしていくといったところで。お子さん、いるの?って先生が聞いて、検査行ってきてって感じ? そんな感じ?

伊藤 そんな感じではなかった。そこの病院は、歯科専門の大きい病院だったので、ちょっとがんの検査をするCTの機械とかがそろっていなくて。ちょっとこれ以上、調べようがないから、もっと大きいがんの専門病院、行ったほうがいいですということで、大きいがんの病院、がんセンターを紹介してもらいました。

岸田 がんセンター紹介されて行って、そこからちょっと上がっていくの、転移なし。転移なかったんですね。見つからなかったと。検査して。

岸田 そして、その後、上がっていくのは、こちらは臨床試験に参加ということなんですけれども。臨床試験参加、どういうことですか。どういう、臨床試験、手術していったんじゃなくて、臨床試験参加したってこと?

伊藤 そうなんです。大学病院から、がんの専門病院に紹介状を書いてもらったんです。そこから舌がんって口の中のがんなので、転移が、ここのリンパに転移もしやすいがんだよっていうことを言われていて。舌がんってそんなに多いがんではないっていうことで、今まで患者さんの数もそこまで多くないので、治療方法が確立はされてなかったっていうのを言われて。

伊藤 転移が多いから、転移がなかったとしても、最初から舌と一緒にリンパを全部取ってしまうっていうのが一般的な治療方法。そういった治療を行っている病院が多い、比較的、多いですっていうことを言われて。

伊藤 そうなんだと思って、私自身も絶対に転移、今後、今、してなくても、今後もしたくないって思いが強いので、だったら全部取ってくださいって、最初は先生にお願いしてたんです。

伊藤 いろいろ検査をしていく中で、転移なしっていうのと、舌にあるがんの深さと長さとかも調べて、ステージがどれぐらいなのかっていうのを診ていってもらってたんですけど。その深さと長さを調べていただいた結果が出たってときに、臨床試験に該当しました、みたいなことを言われて。

伊藤 臨床試験って何なんだろうっていうのを聞いていったら、さっき言ったみたいに、治療方法は件数が多くないから確立があんまりできてないっていうことと、本当にリンパを取ってしまうやり方がいいのか、温存したまま、そのまま生存率を調べていく、生存率を見ていくのがいいのか、今、それを比較している最中だというふうに先生から言われて。

伊藤 臨床試験に参加する場合、リンパを取るか、取らないかっていうのは、伊藤さんは決められないよというふうに言われ。パソコンに私のデータを打って、パソコンがランダムでこの人はリンパ取ります、この人は温存しますっていうのをパソコンに選んでもらう。

岸田 パソコンに選んでもらうんや。

伊藤 そうなんです。いちかばちか、みたいな。

岸田 すごい。それは結果によっては、そのパソコン、うわあみたいな感じ。パソコンに選んでもらっても自分は見れへんのね。先生が見れるのか。

伊藤 そうです。先生にパソコンが選んだ結果が出ましたって電話をいただいたんですけど。臨床試験に参加するかどうかっていうのは、そもそも、やっぱり主人もすごい悩んだし、私もすごい悩んだし、いろいろと相談もして、先生にもいっぱい聞いて。

伊藤 先生からは、やっぱり若い、私がまだ30代っていうこともあって、リンパを取るとすごい傷が残ってしまう、目立つところに残ってしまうっていうのも先生は心配されていたし。

伊藤 あと、臨床試験に参加することによって、しない人よりは病院に通う頻度が短く、たくさん病院で検査したりとか、診察を受けさせてもらえる。

伊藤 私のデータは全て、東京のほうの病院にも見ていただくことができたりとかするので、万が一、今後、転移があったりとかしても、すごい早期発見で治療はできると思うから、臨床試験って悪いことばっかじゃないし、参加しませんかっていうので、最後、決断しました。

岸田 決断して、参加していこうっていうことになるわけですね。結果は多分、手術のときに聞けると思うので、どうなったか聞いていきたいと思いますが。その前にちょっと上がっていきます。何かというと、フライングご褒美ということで、これはどういうこと? テンション上がってるから、ええことなんやと思うんだけど。

伊藤 はい。入院するのも決まっているし、手術するっていうのも、臨床試験の結果をどうであれ、手術するのも決まっていたので、まず手術に向けていろいろ準備しなきゃなと思っている中で。

伊藤 趣味の一つにスキンケアって書いてあったと思うんですけど、自分が頑張るから、1枚3000円くらいするパックを買ったりとか、入院用に。ちょっと高めのパックを、多分、私、20枚くらい買って、入院に備えてっていうのと。あとは、ちょっとお高いお靴を、事前に買ってしまったりとか。

伊藤 自分に対するご褒美を先に、頑張るための自分にということで、結構、奮発して、ご褒美を先に買っちゃいました。

岸田 先に買うパターンね。頑張ったときの自分のためにね。なかなか、フライングしてご褒美する人、なかなか見ないけど。いいと思います。このために頑張る、みたいなね。

岸田 そして、その後に手術を受けていきます。手術、これは部分切除と書いてあるから、結果的にリンパを取らなかったってこと?

伊藤 そうなんです。パソコンが選んでいただいた結果が、リンパは温存っていうほうの分類だったみたいで。

岸田 そうやもんな、絶対分かるもんな。手術の後とか見たら、絶対どっちかって。

伊藤 はい。

岸田 そうなんや。リンパ温存で、その部分だけっていうふうな形やった。臨床試験参加してよかった、悪かったって言うと、そんな評価はできひんと思うけど、個人的にはどう思ってます?

伊藤 そうですね。私、本当に最初は、とにかくリンパを取りたいってずっと思っていて、それは家族にも言ってたし、取るべきだってずっと思ってたんですけど。やっぱり先生の話を聞いたりとか、年齢のこととかも考えたりとかして、冷静になってから考えると、取らなくて私はよかったかなって。

伊藤 今、何もない状態のリンパを取る必要は、私の場合はなかったのかなって思ってて、よかったなって思います。

岸田 ありがとうございます。これも結果そうだったっていうことであって、まだまだ臨床試験中っていったところもあると思うので、今後どうなっていくかも分からへんけど、伊藤さんの場合はよかったということですね。ありがとうございます。

岸田 そしてその後、次、ちょっとテンション上がったのが、顔が洗えるということで、今まで洗えんかったの? 顔、ずっと。

伊藤 そうなんです。手術した後って、口の中がパンパンに腫れてるので、ご飯が食べれないっていうので、鼻からチューブを入れて、胃に栄養を送るやつをやってたんですけど。ここもチューブが鼻に縫ってあった状態で、テープだらけだし、拭くぐらいはできるんですけど、バシャバシャ洗うことはできなかったので。

伊藤 ちょっと一生懸命、ご飯食べる練習をして、無理やり飲み込んだりとかして、合格をいただいて、チューブを取れるまで。

岸田 取れるまでやって、そうしたら、ようやく顔が洗えるし、パックもできる。

伊藤 そうなんです、はい。毎日してました。

岸田 ご褒美やからね。

伊藤 はい。

岸田 そして、ただ、そっから、またちょっと下がってくんすよね。何かというと、手術に縫った箇所が、口内炎にということで。手術は、さっき言った左のその舌のそのところを部分的にちょっと取って、その部分が口内炎になってたってこと?

伊藤 ちょっと取ったって言っても、3分の1ぐらい取ってるんですよ。

岸田 そうなんや。部分やったからと思ったけど、3分の1取らなあかんねや。

伊藤 そうなんです。なので、本当に完全に舌の形状って、今も違うんですけど。結構、しっかり縫っているので、舌がこうあったら、割としっかり縫っている状態で。この縫っているとこの先、舌の先辺りが、そもそも縫ってるので舌がちょっと伸びていて、腫れてるのもあって、歯の裏にずっと当たりっぱなしだったんですよ。

伊藤 何もしてないときも。で、多分その歯の裏にも当たってるし、傷もあるしで、口内炎が縫った糸の上にできちゃった。

岸田 痛そう。そういったところがあって、痛くて、ただ、それは、処置してもらったよね、ちゃんとね。

伊藤 処置が、口内炎、舌の口内炎なので、一応、薬もらったんですけど。唾液、つばがあるから意味がなくて、我慢するしかないっていう。痛み止めだけ、ちょっと強めのやつをいただきましたけど。

岸田 そうやったんですね。ただ、そのどん底を経て、だんだん上がっていきます。これはカップスープで号泣。ちょっと興味ありますけど、今までカップスープ、飲めんかったけど、飲めた的な?

伊藤 病院で、最初ご飯食べるときって、ミキサー食から始まるんですけど、全部ペーストなんですよね。ご飯はもちろんですけど、おみそ汁とかお魚とか、全部ドロドロの状態で、飲み込むしかないっていうのから始まって。

伊藤 ちょっと離乳食じゃないですけど、十分がゆから八分、七分とか、ちょっとずつレベルが上がっていくんですが、本当においしくなくって。ご飯が楽しみじゃなくなるぐらい、結構、ほとんど残してしまってたんですけど、私は。食べられなくて、おいしくないから。

伊藤 そんなときに主人が、コロナで面会はできなかったんですけど、看護師さんのところまでは入れたので、差し入れとかを持ってきてくれていたんです。私が、本当にご飯がおいしくないっていう話をしてたら、その日の差し入れにカップスープがいっぱい、5個ぐらいかな。いっぱい買って、入ってたんです。好きな味を選んで食べてみてって。

伊藤 飲むやつだから、いけるんじゃないということで買ってきてくれて。すぐにお湯を入れて食べたんですけど、こんなにもカップスープがおいしいと感じることは初めてで、人生で。普通の人が食べてるものを口に運べるのが、すごいうれしすぎて、ポロポロ泣いてました。おいしい。

岸田 分かる。そういう、本当、病院食だと味もちょっと薄いし、それ、食べたら、本当に出ちゃうよね。本当ね。旦那さんに感謝ですね、本当ね。素晴らしい旦那さんで、そしておいしいカップスープでよかった。

岸田 そしてその後、退院していく。退院していった後に、こちら、リハビリしていくという形なんですけれども。そうですよね。だってリハビリしないと、今、伊藤さん、めちゃくちゃ流ちょうにしゃべってるけど、それって3分の1ないんですもんね。

伊藤 そうなんです。

岸田 どんなリハビリしたんですか。

伊藤 病院でのリハビリって全くなくって、本当に退院、特にリハビリの方法とかも教えてもらわず退院したっていう状態だったんですけど。家族としゃべるのが一番のリハビリで。子どもがまだちっちゃいので、絵本が大好きで、毎日、絵本を子どもに読んだりとか。

伊藤 とにかく子どもに絵本の読み聞かすと、家族と会話をするっていうのをやっていたら、ちょっとずつしゃべれる、元通りではないですけど、しゃべれるようになった。

岸田 今ぐらいしゃべれるようになったの、どれぐらいかかりました?

伊藤 退院したのが11月の終わりぐらいだったんですけど、2月の頭ぐらいには多分、戻ってましたね。

岸田 4カ月ぐらいか。

伊藤 3カ月とか。

岸田 3カ月。ありがとうございます。なので、すごいなと思います、本当。そんな中、一人でコンビニへ。一人でコンビニ行けるようになった、ようやく、33歳。

伊藤 違います。行ってたんですけど。そういうことじゃなくて、本当にしゃべれなくて。しゃべれないし、家族以外の人と会話をするのが怖くて。自分の言ってることが通じないんじゃないかとか、最初、思っていて。

伊藤 コンビニとか、スーパーでも、レシートいりますかとか、袋どうしますかとか。結構、行きつけのコンビニとかだと、しゃべりかけられたりすることもあるし。

伊藤 それが怖くて、ずっと行けなかったんですけど、ようやくリハビリも頑張って、「うん」とか「そうですね」とか、「ありがとうございます」ぐらい言えるようになってから、コンビニに行ったときに、何事もなくコンビニに入って、コンビニから出ていくことができて、うれしかったです。

岸田 そういうことですね。よかった。家族だけじゃない人と会話、少しでもできたっていうことですね。そして職場復帰ということで、職場復帰して、今のお仕事的には、何か不自由なこととかないですか、大丈夫ですか。

伊藤 そうですね。最初は、私の仕事内容が結構、研修をやったりとか、セミナーをやったりとか、電話を対応したりとかっていう、しゃべらないと成り立たないようなお仕事なので、最初、本当にちょっと不安だったんですけど。

伊藤 今、マスクもあるので、口の動きは本当に気にせずに会話できますし、ありがたいことに、私、周り、職場の人、一部しか知らないんですよ、休んでたことも、がんだったことも。リモートワークとか、在宅が増えてるので、いなくてもバレないというか。

伊藤 なので、一部の人しか知らないんですけど、復帰してから、話してて聞き返されることもないですし。今は全然、楽しく働くことができています。

【大変だったこと→乗り越えた方法】

岸田 すてきです。ありがとうございます。そして、伊藤さんの大変だったとき、困ったとき、どう乗り越えたか。こういただいてます。大変困ったことといったところは、コロナ禍で家族に会えなかったこと、そして術後はしゃべれないので、電話ができなかった。

岸田 それをどう乗り越えたかというと、交換日記。そして、ビデオ通話で筆談とあります。これら、教えていただいてもいいですか。

伊藤 はい。きょう、持ってるんですけど、主人が書いてくれて、これ、主人が作ってくれたんですけど。

岸田 めっちゃエモいやん、旦那さん、本当。

伊藤 これを主人が、仕事も結構、休んでくれたりとかして、入院中。毎日ほとんど、来ない日はないんじゃないかってぐらい、子どもの絵とか交換日記を毎日、書いてました。

岸田 本当、すてき。そして、しゃべれないから電話できなかったのは、筆談でビデオ通話でやったと。

伊藤 そうですね。100均のダイソーに売ってるボードみたいな、消したりできるやつを持っていたので、病室でそれを書いて、見せて、子どもと会話するっていう。

岸田 やっぱ1人、どうでした? コロナ禍で、やっぱ1人じゃないですか。寂しいですよね。

伊藤 と思って、大部屋にしたんですよ。

岸田 と思ってた。

伊藤 2日で、限界で。

岸田 限界で? どういうこと?

伊藤 コロナだから、誰にも会えないしと思って、大部屋にあえてしたんですけど、やっぱり他の、年齢も違えば。

岸田 性格もあれも違うしね、リズムも。

伊藤 本当に、年上の方ばっかり、年上って言っても結構、年上。

岸田 うん、おばあちゃんとか。

伊藤 そうですね。ばかりだったので、本当に耐えられなくて。もう2日で無理ってなって看護師さんにお願いしたんですけど空かず、個室が。個室待ちをしていて、入院して1週間後ぐらい、手術終わって3日目、4日目ぐらいから個室に入ることができたので、そっちのほうが安心、安定してましたね、気持ちが。

岸田 気持ちはね。そっか。そこで家族とも、個室やったら周り気にせず電話もできるし。

伊藤 そうなんです。

岸田 ありがとうございます。そして、伊藤さんからこんなメッセージをいただいています。

【メッセージ】

伊藤 はい。みんなに甘えることと、気持ちだけは強く持ってということで。私自身、がんって診断されて、そのときは本当にお先まっ暗で、人生終わったなって思っていたし、すぐ泣いてばかりいたんですけど。

伊藤 そんなときに主人から、気持ちだけは強く持ってねって。大丈夫だから気持ちだけは絶対強くねっていうのを、何回も言われました。『病は気から』っていう言葉、あると思うんですけど、まさにその通りだなって思って。

伊藤 私自身、子どももいて、主人もいて、両親もいて、大事な家族がいるんですけど、やっぱり家族のために、気持ちだけは前向きにって思うことが、主人のおかげでできたかなって思ってます。

伊藤 多分、1人だけだったら、マイナスなことしか考えれなかったし。嫌なほうにばっかり、気持ちがいっていたと思うんですが、家族がいたからこそ、前向きに病気と向き合うことができたなって思っています。

伊藤 あと、私がきょう、こうやってしゃべってるのを聞いていただくと、少しは希望が持てるんじゃないかなって思うんですけど。早期発見で、部分切除で済めば、これぐらいしゃべれるようになるっていうのを、見ていただいている方に伝えたかったので、きょうは参加させていただきました。

伊藤 なので、絶対、気になったらすぐに、病院に行ってほしいなって思ってます。

岸田 ありがとうございます。

岸田 本当に、気持ちだけは強く持ってっていう言葉は、病は気からじゃないけれども、本当にやっぱ、同じ時間でも、気持ちを高く持っていくのか、低く持っていくのかによって、全然、過ごし方が違ってくると思うんで。その気持ち、すごくよく分かります、本当。

岸田 きょう、こうやってご出演していただいたっていったところに関しても、やっぱり舌がんで、そして手術をして、どれだけしゃべれるかだって、いろんな不安があったと思います。ただ、そういった中でも、伊藤さんのようにしゃべれる場合もあるし。ただ、部位によっては、もちろん、しゃべることが難しい場合もあるので、いろんなケースがあると思いますので。

岸田 あくまで伊藤さん、このケースだったといったところで、皆さんも参考にしてもらえたらなということを思っております。番組の大半が、旦那さんとの、のろけ話じゃないかとひやひやしてたんですけど。冗談です。すごくいい旦那さんで、エモくて、すてきでした。

岸田 やっぱりそういって、支えられるような人になりたいなということを、あらためて思いました。ありがとうございます。そんな中で、きょうのがんノートmini、終わっていきたいと思います。どうも伊藤さん、きょうはどうもありがとうございました。

伊藤 ありがとうございました。

岸田 それではバイバイ。

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