23歳という若さで甲状腺がんを発症した樋口さん。その後、転職や結婚などを経て、彼を取り巻く環境は大きく変化している。発症から4年が経過した今、彼が思うこととは……?

【略称】インタビュアー:岸田 / ゲスト:樋口

更新日:2018年03月11日

 

【発覚・告知】

岸田 お医者さんからどういうふうに宣告されたんですか。

樋口 2013年8月に以前の会社で健康診断を受けて、その翌月の9月に普通に会社を辞めて転職活動しようと思ってました。転職活動していく中で、健康診断で前に肺かどっかが引っ掛かってたので、取りあえず健康診断受けて、新しい病気があったら困るなと思って一緒に病院も行ってたら、がんですっていう告知を受けたんですよ。

岸田 早いなあ。

樋口 3日後に会社を辞めたんですよ。「俺やべえじゃん」ってなったんですね、そこで。

岸田 いや。「やべえじゃん」てなるよね。

樋口 そうなって。その後、本当早いんですけど、本当これリアルなんですよ。その1週間後、告知を受けた日に今働いてる会社の説明会があって、朝病院行って告知を受けて「恐らくがんだよ」って言われて、夜は転職活動してたので合同説明会みたいのあるじゃないですか。そこに行って今の会社を見つけて、取りあえず面接が始まって、面接を受けながら病院も行きつつ、1週間後ぐらいに内定が出て。その後、最初に受けた病院ではこれ以上詳しく調べられないと言われて、がん専門病院に行って。そこで初めてがんですとに言われて、ようやく入院・手術という感じですね。

【家族】

岸田 樋口家の家族を教えてください。どんな構成ですか。

樋口 今は結婚してるので、自分と奥さんがいるっていうのと。

岸田 自分のご両親は。

樋口 そうですね。両親がいて、あと妹が2人います。なので5人家族。

岸田 そうなんですね。がんって知ったときに、ご家族の反応はどうでした?宣告のとき、一緒に来てくださいとか言われませんでした?

樋口 宣告のときは特に言われませんでした。宣告の後、手術とか入院の手続きの説明するのでそのときは「もし良かったらご両親呼んだら」と言われました。

岸田 じゃあご両親に、がんって宣告を伝えるときはどうやって伝えましたか。

樋口 ちょっと気が動転してたので、そのまますぐ母親に電話して、がんかもしれないって電話して。

岸田 お母さんの反応はどうでした?

樋口 そのときは、そうなんだみたいな感じで、電話ごしだっのでちゃんとは分かんなかったんですけど、後から聞いたら、すぐ自分の父親とかに連絡して、いろいろ情報収集を始めてくれたみたいです。

岸田 それ以外になんかサポートがありました?

樋口 ちょうど、会社を辞めようとはしてたので、転職の相談を自分の父親にはしてました。父親のアドバイスは、ちゃんと次決めてから辞めなさいみたいな感じだったんですけど、ちょっと事情が事情だったんで、あと若干、自分が先に転職活動に踏み切っちゃったんで、自分で決めればいいやと思ったんですけど。がんだったときに、次の会社でどうしたほうがいいよみたいな、一般的な事例みたいなことを教えてもらいました。

岸田 お父さんから。

樋口 そうです。僕のがんは、そんなに重いわけではなかったので、これくらいだったら多分、次の会社に行っても問題ないんじゃないっていうふうなアドバイスとかもらったりしたので。

岸田 では、妹さんたちにもがんということは伝えたんですか。

岸田 そうですね。伝わりましたね。

樋口 それはどういう手段で。

岸田 それは、もうがんかもしれないってことは1カ月前に分かってたんで、分かったらすぐLINEでがんだったって兄妹LINEで。

岸田 兄妹LINEがあるんですね。

樋口 そうです。「がんだったよ」って打って。そしたら「頑張って」って。

岸田 軽。本当にもう、そんな感じ?

樋口 そんな感じですよ。

岸田 そうなんや。樋口家は結構ライトな感じなんですね。

樋口 そうですね。多分、あんまり重苦しい雰囲気になるよりも、明るくやってった方がいいんじゃないっていう家族の感じもあったのかもしれないですね。

岸田 じゃあ、妹さんたちからはそういった形で励まされたりだとかして。

樋口 そうですね。

岸田 家族的に、もっとこうしてほしかったっていうのは、特に大丈夫でした?

樋口 強いて言うなら…。

岸田 言っちゃいましょう。

樋口 ライト過ぎた感はやっぱりあったんで。もうちょっと寄り添ってほしいなって思いつつ。

岸田 もうちょっと寄り添ってほしいなと思いつつ、まあライトだから、ライトで良かったこともありますしね。

樋口 ありますね。

 

 

【恋愛・結婚】

岸田 恋愛・結婚のところについても、お話していただけますか。

樋口 がんになった当時は彼女はいなかったです。

岸田 その後、今の結婚って恋愛結婚?

樋口 まあ恋愛、お見合いみたいな。

岸田 今の奥さまと会うときに、自分はがんだったって伝えたんですか。

樋口 そうですね。付き合うときに伝えました。がんだったというふうに。

岸田 伝えるときに、結構ハードルとかなかったですか。

樋口 お見合いなんで、間に仲人さんみたいな人がいて。結婚前提みたいな感じじゃないですか。

岸田 そうなの。もう結婚前提の。

樋口 そうです。なので、仲人さん経由で向こうのご両親には、僕ががんだったんだよというのを伝えてもらったんですよ。

岸田 そういう伝え方もあるのか。

樋口 そう。向こうの両親が多分、僕の今の奥さんに伝えるというのは先にやっといてもらって。

岸田 お見合いする前に?

樋口 違う、お見合いした後です。2回ぐらい会ったんですけど、3回目ぐらいに僕と今の奥さんと2人でデートして、結婚前提につき合ってくださいっていうことを言ったんですよ。そのときに、実は僕こういう病気だったんだって言って。

岸田 それを言う前々日ぐらいに、もう仲人さんから情報だけは流しといて。2日後ぐらいに、自分からも言うと。

樋口 そうです。

岸田 そのとき、なにか葛藤とかはなかったですか。

樋口 ありましたね。それで駄目だったら、嫌だったけど諦めるしかないなというふうに思いました。

岸田 がんのこと分かってくれるとか、ちゃんと病気のことも知って。

樋口 そうじゃないと結婚はできないなというのはあったので。それを分かってくれる未来の奥さんだといいなって思って、そのときは付き合ってくださいって普通に言いました。

岸田 そうなのか。今の奥さん側も「はい分かりました」と。

樋口 そうです。

岸田 そういう葛藤があったんですね。

【辛いこと・克服】

岸田 肉体的・精神的には、どんなときにつらくて、どう克服しましたか。

樋口 肉体的にはないといえばないですけど、体力落ちちゃったときは「なんでこんな落ちてるんだろう?」と思いました。だけどそれはもう微々たるもので、やっぱり精神的に転職活動とがん告知が一緒だったので、2013年の10月、11月辺りはつらかったですね。一番つらかったのは、内定が出た後にがんと向き合うじゃないですけど、いろいろネットで調べたりとか、本で探したりしてたとき。がんのことしか考えなくていい状況ですけど、逆に一番面と向かってるときだったんで、そのときはとってもつらかったですね。

岸田 とってもつらかったっていうのは、どんな感じですか。

樋口 自分じゃ治せないから。解決法があるんだったらいいですけど。それまでは結構不自由なく生きてきたほうで、家族とか親切にいろいろやってくれてたりしてたので。病気になって、家族にも助けてもらえないし、お医者さんにしか助けてもらえないので、がんを取り除くっていうことに関してはね。だからがんがあること自体、手術までの間がつらかったって感じですかね。

岸田 結構落ち込みました? そのときは。

樋口 そうですね。落ち込むたびに、本屋に行くとか、ネットを見るとかして。

岸田 何も解決法はないけど、そうやって落ち着かせる。

樋口 そうです。あとはそうですね、親しい友達とはちょっと遊んだりとかして、気晴らしに。

岸田 友達には、病気だったってことをどうやって伝えたんですか。

樋口 本当に仲のいい友達には直接。「今度ご飯行こうよ」と言ってそのときに伝えたりとか。あとはFacebookで。「こんにちは、初投稿でびっくりさせてごめんなさい」みたいな感じで。当時はそんなFacebookはやってなかったので、友達が30、40人ぐらいだったんです。

岸田 Facebookの初投稿でいきなり。

樋口 そうです。200、300人の友達がいたら、絶対嫌だったんですけど、僕が1、2年以内に会った友達だったんで、いいかなと思って。

岸田 その人たちにだけなら。

樋口 例えば友達と5人で遊びに行って、4人とも知らないという状況でいきなり言うのは結構嫌だな。言いづらいなっていうのがあったので。先制攻撃じゃないですけど、先に知らせて、自分のフィールドを作っとく。

岸田 フィールド、大事。そっか。そういった形で、友達にも伝えて、みんなと遊びにいったりだとかして、気を紛らわせて。

樋口 そうですね。

岸田 不安な気持ちを克服してきたんですね。

【後遺症】

岸田 後遺症はありますか?

樋口 今はないんですけど、ここ(喉元)を手術したので、その当時は飲みづらさとか変な感じがしました。詰まるっていうか、そういう感じはありましたね。

岸田 そっか。今は大丈夫なんですか。

樋口 今はその感覚に慣れて、気付かないのか分かんないですけど大丈夫ですね。その当時は手術した後なので、今よりも詰まる感覚がありました。

岸田 詰まる感覚、なんか喉がきつくなってるみたいな感じですか。

樋口 そうですね。

岸田 多分これは、なった人にしか分からへんのやろうな。

樋口 そう、甲状腺がんの人、友達とかに聞くと、飲みづらいねみたいのは結構聞きますね。食べづらい、飲みづらいってあったけど、その前意識してなかったから分らなかったけど、手術の後はそういうのあるねというのはよく甲状腺の友達言いますね。

岸田 そっか。傷を他の人に指摘されたことありますか。

樋口 あります。ここのできもののこととか。

岸田 「なんかできものできてんで」という感じ?

樋口 そんな感じもあれば「これどうしたの?大丈夫?」とかって。

岸田 そのときどう返してるんですか。

樋口 そのときは、がんのことを知ってた人だったら「これ手術痕だよ」というふうに言うし。知らなかった人だったら「ちょっとかいちゃったんで」って。

岸田 全然違うやん。

樋口 違うんですけど。知らない人にいちいち説明するのがもう嫌なんですよ。

岸田 全部ゼロから話さないといけないからね。どうやって分かったの、こうやって分かりました、こういう手術でした、大変じゃなかった、ああ大変でしたって。

樋口 その場で、どんよりとした重い空気になるのが嫌だったんで。

岸田 そういうことね。

樋口 何回かそういうことはあったので、初めての人。なので最近は、がんのことを知らない普通の友達とかに会ったときは、「かいちゃって、別に大丈夫だよ」みたいな。

岸田 そうね。

樋口 「お前ばかだな」ぐらいに思ってくれたほうが。

岸田 まあ、確かに雰囲気もあるしね。

樋口 そうなんですよ。あと飲み屋とかで「樋口はたばこ吸わないの?」って全然がんのこと知らない人から言われたときに、がんのことを知ってる友達が、樋口はたばこは駄目だとか結構うまい感じで言ってくれるんです。

岸田 いいですね。

樋口 そうですね。そしたらもう、そこから話し広がらないんで。なのでもう当たり前かもしれないですけど、がんを知ってる友達としか最近は付き合わなくなってきましたね。

岸田 じゃあ交友関係もちょっとだけ変化はあったんですね。

樋口 ちょっとだけ、そうですね。

 

 

【キャンサーギフト】

岸田 樋口君が、がんになって失ったこともあると思いますけれども、得たもの、得たことっていうのはなんでしょうか。

樋口 もう、本当にいろいろあって、がんになった初告知のときに、次の会社も見つかったし。

岸田 面接行ったり。

樋口 いろいろあるんですけど、そういう意味だと、幸せをもらいましたね。

岸田 お仕事のことだったりとか。

樋口 結婚するにしても、自分ががんだったことを分かってくれたし、上げればきりないですけど、まとめたら。

岸田 幸せを、がんからもらった。

樋口 そうですね。がんがきっかけで、今の自分の人生はあると思うんで。そこからのスピードが、がんになる前と後だったら、自分の行動とかスピードがどんどん速くなってるんで。

岸田 そうなんや。

樋口 いいことが毎年続いてるなって感じはあるんですよ。転職も2014年にできたし、2015年にSTAND UP!!のメンバーの人といろいろ交流会とかに結構行ったりして。

岸田 STAND UP!!って、若年性がんの患者会。

樋口 そうですね。こんな同い年とか同世代で、こんなにがんの人がいて、やっぱり周りの人と比べると、自分ってすごい楽なほうだったので、そういう情報とかもそういう患者会に行かないと絶対分からないですし。というふうに、2015年に仲間が増えて、2016年にお見合いして、2017年に結婚できたんで。

岸田 今年も何かいいことが。

樋口 あるといいなって思いながら。

岸田 確かにね。がんになってから悪いこともあったけど、いいことが今のところ続いてるから、そういった幸せをもらえたんじゃないかと。

樋口 そうですね。

岸田 じゃあ2018年どうなるか期待ですね、本当に。

樋口 自分も楽しみです。

【今、闘病中のあなたへ】

岸田 今、闘病中のあなたへというところで、ぜひ樋口君からメッセージをいただければと。

樋口 仲間を作ろうってことです。

岸田 仲間を作ろう。じゃあ、なぜ仲間を作ろうなんですか。

樋口 がんという診断を受けたときは、やっぱり僕の周りにがんになる人ってほとんどいなかったので孤独だったんですよ。でも仲間をどんどん見つけていくことで、自分自身のストレスも不安みたいなのも少しずつ和らいで、僕自身、今は結婚もできて新しい会社でも働けて、自分のがんのこと分かってくれる仲間がこの4年間でどんどん増えてきたなっていう感覚があるので。がんになっても絶対1人じゃないから。最初は厳しい、きついかもしれないですけど、自分から少しでも楽しく幸せになるために仲間を見つけて作ろうとしていけば、自分自身が楽になるんじゃないかなと思います。

 

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