がん患者が知りたい、製薬企業社員のホントのところ
イベント報告
普段、がん患者さんと製薬企業さんは接する機会は少ないと思います。そこで、リレー・フォー・ライフ・ジャパン東京上野にて、事前に患者さんから伺った質問を製薬企業の社員さんにして、興味深いお話が聞けました。
【患者団体のイメージは?】
岸田 『リレー・フォー・ライフ・ジャパン2017東京上野、がん患者が知りたい製薬企業社員のホントのところ』をスタートいたします。今日は、5人の方にお集まり頂き、皆さんの首に巻いているバンダナの色で呼び合っていきたいと思います。よろしくお願いいたします。それでは早速、患者団体のイメージとは?これ、製薬企業さんというより、個人の見解ですので、そこはご理解頂ければと思います。それではパープルさんからお願いいたします。
パープル 患者さんだからこそ知っていることってあると思うんですね。なので、患者さんの中でそういう思いを共有・共感する組織として患者団体があると思っています。もう一つは製薬会社と患者団体は、そこまで距離が近い感じがしないので、もう少しコラボレーションができるようなことも今後、考えていけたらなと思います。
岸田 はい、ありがとうございます。では、ピンクさん。
ピンク はい、ピンク です。私はリレー・フォー・ライフ、年に3回位は参加させて頂いていまして。その中で患者団体さんが、非常に熱心にそれぞれの思いを持ってやっておられるのを見て、いつも本当に素晴らしいと思っています。一方、私、外資系の企業で、海外の患者団体さんのお話を聞くと、巨大でお金も持っていて、組織されています。そういった意味でいくと、日本の患者団体さん、まだ手弁当感覚があるなと、製薬会社もですけど、切磋琢磨していかないといけないかなと思います。
岸田 ありがとうございます。ホワイトさん、お願いいたします。
ホワイト 私、個人が患者団体さんを見た時に、その病気に関して凄い勉強してらっしゃるなと思いまして、患者団体さんから学ばせて頂くことが、非常に多いなと感じます。ただ、薬に関して、患者さんが求めている情報とかをしっかり同じ目線で発信できているのかなって。私、もともと病院で看護師をしていた経験があり、その時から患者さん個人も、団体に関しても凄く距離があると感じまして、逆に患者さん側からも製薬メーカーって、ちょっと遠い存在なのかなっと感じています。
岸田 ありがとうございます。レッドさん、よろしくお願いします。
レッド このお題を頂いて、まず自分自身が本当に患者団体さんを分かっていないことを感じました。実際、製薬企業の者として、患者団体の方に直接、接することって正直少ないです。ただ一方で、こういう場で色々お話を伺って、患者さんの思いを感じて、製薬会社として受け止めることが本当に大切だと思っています。
岸田 ありがとうございます。ブルーさん。
ブルー はい、私も幾つかの患者団体さんとお付き合いをさせて頂いております。共通して思いますのは、そこの団体をつくった人やリードした人は、自分や家族が病気になった時にあまりにも情報がなくて、どうしていいか分からないような状況で、他の人が同じような状況になってもらいたくないという強い志を持ってつくられて、運営している方がほとんどですので、本当に頭が下がる思いです。ただ、我々も製薬企業として、何とかサポートしたい気持ちもあるんですけれども、やはり、薬の話を直接お話しすること自体は、色々な問題があってできなくて、少し歯がゆい思いをしています。また逆に、患者団体さんのほうに、もし後でお時間あれば、お聞きしたいんですが、例えば製薬会社が歩み寄って来た時に、この製薬会社は何か裏があるかと思われているかなって。
岸田 今、聞きたいですね。じゃあ、そちらの僕と目が合っている男性の方。
A- オストミー協会に所属で、人工肛門の患者会の長野県支部から来ています。率直に言って、急に来られたら、裏あるかな。ただ、そこの趣旨の話をして頂いて、その中身が良ければ、ぜひ協力させて下さいと思うんで、そこはしっかりとしたコミュニケーション次第かと思います。
岸田 らしいですよ、ブルーさん。
ブルー 本当、貴重なご意見ありがとうございます。心して、目的をお伝えできるように準備して連絡させて頂きます。
岸田 ありがとうございます。ちゃんと趣旨の説明が必要ですけれども、そんなちゃんと趣旨を説明されたことって、ほぼないかなと思っています。これ、ピンクさんにお伺いしたいんですが、やっぱり、そこのところも海外と日本で変わるんですかね。
ピンク 私、アメリカやヨーロッパの担当者と話をすることが定期的にあるんです。もちろんアメリカもですけれど、ヨーロッパは特に、教育された患者団体の代表の方がおられると、新薬とか特定の病気に対して、割と共通言語で製薬会社と話せます。そういった意味で、今の日本では結構、難しいのかなと感じてはいます。
岸田 それって、やっぱり、日本独特の法律や、日本人の性格、風習、慣習的なところですか。ホワイトさん、お願いします。
ホワイト ありがとうございます。医療機関にいた中での経験ですけれど、やはり患者さんが海外の医療と比べると、先生にお任せしますという性質は、凄く強いって思います。アメリカの病院で研修をしていた時は、ちょっとした病気についても患者さんが、先生にぐいぐい聞いていたので、やはり、そういうところを考えると、凄く日本人の性質もあるかと感じます。
岸田 海外だと、ぐいぐい色んなことを聞いて、色んなアクション起こすってことですよね。ピンクさんがおっしゃったように、がん患者団体の教育は、日本だとまだまだ少ないので、もっとやっていかないと思っております。患者は基本的に初めてなるもので、何があるか全然、分からないですから、そこも勉強していかないといけないと思っております。ありがとうございます。
【新薬開発について】
岸田 次に新薬開発について。これ、事前に患者さんから頂いている質問ですけれども、今どれ位の規模で新薬が開発されて、実際、それがどれ位お薬になっているのかをお聞かせ頂ければと思います。製薬企業全体や大手企業の話でもいいと思います。パープルさん、お願いします。
パープル 自分の所属する会社で言いますと、研究段階から考えると。
岸田 研究段階って、どういう定義なんですか。顕微鏡レベルや化合物レベルなのか。
パープル 人に試すまでいくと臨床開発っていうんです。それに至るまでの試験管や、動物での試験が、研究の段階なんですけれども、その研究段階ですと、100位あるのかなと思います。
岸田 100か。けど、もっとやっているイメージありました。
パープル そうですね。それ、他の会社さんとも比較して頂けたらと思います。
岸田 はい、ありがとうございます。自分の会社以外で100とかのレベルなんですか。
ピンク 例えばアメリカだったら1000単位、数千の臨床試験があると思いますね。
岸田 臨床試験ですよね。なので、新薬開発といっても、分子レベルじゃなくて、実際に臨床試験をしているのが1000、2000?
ピンク はい。私の会社では3桁はないですね。がんの薬の臨床試験に関していえば、30とかの数をやっていると。
岸田 その30、例えば肺がんや乳がんとかメジャーながんで20個位なのか、それとも、色んながんで30なのですか?
ピンク 色んながんに対してやっています。そこは、この薬が効きそうながんを選んだら、こういうがんが選ばれたということで、幾つかのがんに対して臨床試験を行っているという感じですね。
岸田 ありがとございます。他3名、どうですかね。ホワイトさん。
ホワイト 研究の段階、顕微鏡レベルやマウスレベルは、もっとやっているのかもしれないんですけど、臨床研究で、本当に新しい薬は数個です。一つの薬が、色んながんに効く可能性がある、それを色んながんの種類に合わせて試験をしてとか、あとは色んな掛け合わせをして、効果がどれ位出るのかっていうのを見ていくパターンで、臨床開発されることが多いと感じます。
岸田 確かに一つのところで効けば、他のがんとか、色んなところに効く可能性もありますもんね。今、そういったものも、色々推奨されているかと思いますので、それは希望になるかもしれませんね。
レッドさん、ちなみに、新薬1個につき、お金も幾ら位かかりそうなのかとか、ちょっと。
レッド 新薬1個、一般的に1000億とかかかるのは、がんだとざらですね。今、そういうのを一つの企業でやると非常に難しいので、大学機関や色んな会社とのコラボレーションで新薬開発を急いでいるのが、最近の主流になっていると思います。
岸田 その色んな大学とか病院とかと、色んなことしてらっしゃると思うんですけども、それって結構、簡単にできるものなんですか、それともハードル高いんですか。
レッド その部分に関しては国も様々な予算を付けて、がんに関しては注力していると認識しています。そういうところに対して、例えば大学医局の先生が資金を申請して、その資金を元に製薬企業と共同研究という流れが生まれているのが現状です。
岸田 じゃあ結構、積極的にできる感じなんですね。
レッド そうですね。特に希少がんとか、難しいがんに関して、国の資金をベースにやられるケースが多くなっています。
岸田 ありがとうございます。ブルーさん、どうですか、新薬開発について。
ブルー うちの会社は非常に小さい製薬会社なので、色んながんの種類の開発はしておりません。研究開発に投入できる費用が、大手さんに比べれば100分の1位の。
岸田 2桁も違うんですか。
ブルー そのため、我々は小児がんの薬に特化しています。小児がんで、海外では普通に使われている薬が、日本では全く使えない環境が多いです。そのため、家族は海外に子供を連れていって治療させたり、個人輸入したりしているのが実態です。それを我々は解決したいという思いでやっており、今、四つ臨床試験をやっております。
岸田 確かにそうですね。大手企業さんだと100や何千とある中、それ位なりますよね。けど、小児がんって、多分、年間の患者数も少ないと思うんですけれども。
ブルー 大体、全体の小児がんで2000~ 2500人です。その中で十何種類のがんが分かれていますから、一番多いリンパ性白血病でも200~300人、神経芽腫とか50~80人位の患者がざらなので、なかなか大手さんでは、開発は難しいかと思います。
岸田 だって、その数だったら、ぶっちゃけお金的なのも回収できないでしょう?
ブルー ですね。正直、最初に承認された時に薬の値段が付く段階では損しない金額のことがあるんですけども、ご存じのように2年に1回、薬の値段が約7、8パーセント下がる仕組みなので、10年超えたら逆に、赤字になることは多々あります。
岸田 ですよね。最近も薬価改定で、色んなお薬の値段も変わったと思います。そういうところが企業さんは厳しいですよね。
ブルー ですから、我々も頑張っています。国も一生懸命、頑張っていますけれども、患者さんの声も重要かと思っています。
岸田 新薬関係について患者さんに聞いてみたいことありますか。
ブルー 新薬関係ですか。やはり小児がんの世界にいると、治す薬を開発して下さいと強く思っていて、海外で使われているけど日本で使われてないドラッグ・ラグの問題を何とかして下さいって思いますけど。そこの、井上さん、小児のがんの色々やられて、たまたま来られていました。
岸田 じゃあ、そこの素敵な女性の方、よかったら、どういうお立場で何をしていて、聞きたいことやご意見をお願いします。
井上 急にご指名いただきまして、ドッキリで。国立がんセンター中央病院の12階小児待合室で、病院に来ても病棟に入れない兄弟に遊んでもらう活動をしております。そういった中で親御さんや兄弟、病気の子の声を聞くことも沢山あります。彼らが望んでいるのは、今、実際に目の前にいる病気の兄弟や子供に合うお薬を一日も早く届けてほしいというのが現状です。
岸田 ありがとうございます、そうですよね。本当におっしゃる通りだと思います。
ブルー ありがとうございます。
【希少がんの課題】
岸田 では次の、先ほどお話にあった希少がんの課題について、今どんなことが課題で、そのために何をしているのかを、じゃあ、レッドさんのほうから。
レッド はい、まず日本の薬事法、いわゆる承認制度において、安全性、有効性それから適正使用を確認して一番最後に検証試験が必要になる。その検証試験の規模や時間、研究の費用もかかるのが一番大きな課題だと認識しております。
岸田 ありがとうございます。そういった中でホワイトさん、ホワイトさんが考える希少がんの課題で、何か見解を。
ホワイト 私がいる会社でも希少がんのお薬を、世に出したんです。その時に、最終的に安全か、効果があるのかを調べる人数が少ない状況で、それでいい結果が出たので、世に出したんですが、世に出してから、そこの段階では分かり得なかった副作用も出てきて。副作用が出ると、患者さんが凄く辛い思いをするので本当に怖いなというのは思ったので。やはりお薬が出た後も、ちゃんと安全に使えているかを我々や医療機関がしっかりとフォローしていく体制が大事だと思います。
岸田 安全に使えていくということですよね。例えば、希少がんのお薬って、大きな病院で取り扱わないといけないものが、クリニックで使われて、副作用が出て事件になったことがあると思うんですが、製薬企業さんは、それは避けたいことですよね。
ホワイト そうですね。やはりとても画期的な新しい薬が出て、私達が制限をして、ちゃんとシャッターを下ろしているはずなんですけれど、色んなルートからそういうクリニックさんは仕入れる。あとは本当に同じお薬なのか分からないものを使うこともあって、使う量とか、本当に効果があると検証されている量ではない使い方をすることが実際にありまして。それで患者さんは効果が得られずに、副作用で辛い思いをすることがあります。私達もシャッターは下ろしていても、うまく機能しないことがあるので、やはり患者さん自身がちゃんとした病院で治療を受けて頂くことが必要だと思います。
岸田 一応シャッターは閉めているんですね。なのに、どっかからクリニックだとかに行くんですね。てっきり製薬企業さんが色んな所に卸していると患者として思っていました。
ピンクさん、どうでしょう。
ピンク もちろん適正な病院で使って頂くよう、我々もそういったところ制限をかけている。我々というか、当局と話してそういう形になっております。一方で、適正な病院と言われましても、やはり病院の中でも、例え大学病院でも色々あるように感じています。先生個人の問題ではなくてね。
岸田 病院の問題ですか?
ピンク はい。それは、やはり医師、看護師、薬剤師、あるいは検査部門の方ですね。きちんと検査、投与、治療なりをできるかっていうのは、治療もですけれど、この開発段階からさらに差が付きやすいところなので、そこをしっかり見極めた上で開発を進めていかないと、新しい薬もでないのが正直なところですね。
岸田 ありがとうございます。じゃあ、希少がんの方で何か質問をちょっとお願いできたらと思います。
B- こんにちは。僕、希少がんで腺様嚢胞がんACC(adenoid cystic carcinoma)なんです。頭頸部に主に発症して、とても術後のQOLが大変で苦労はしています。このがん、とても肺に転移しやすくて、今、僕も肺に多発転移して、抗がん剤が効きにくく、多発転移するともう放射線や手術での切除は不可能で、あとは薬を待つしかないんですね。幸い、進行が遅いがんなんで、その間に新しい薬が出るか期待が非常にあるんですね。今までのお話を聞いていると希少がんに対してもお薬を作れないわけではないこと、よく分かりました。だけど、それが認可されるには、もの凄くリスクがあることもよく分かったんですね。ただ、それでも僕らはこうやって、薬が出てくることを希望し、希少がんに対する開発は、ぜひ続けて頂きたいです。
岸田 ありがとうございます。やっぱり患者さんは待っているというところで、パープルさん、どうですか。
パープル 製薬企業の者としては、ちょっと耳の痛い話ではありますし、やっぱりそういう患者さんがいることを、我々はしっかり認識した上で、色んな希少がんや希少疾病に関しても、薬を提供できるように研究開発を進めていこうと、また改めて感じさせてくれました。ありがとうございます。
岸田 ありがとうございます。レッドさん。
レッド 希少がんに関しては既にご存じかもしれませんけども、つい先月末、条件付き承認制度の法制化に向けては動きだしているという状況ですよね。そういう承認の部分の整備等々が日本は進んでいますので、希望を持って頂ければと思います。
岸田 ありがとうございます。希望を持って頂いて。これも患者さんから頂いている質問ですが、技術進歩されている中で、直近1、2年で一番進歩した技術、もし何かあれば、教えて頂きたいと思っております。
ブルー 免疫チェックポイント阻害薬は、画期的な薬だと思っています。
岸田 免疫チェックポイント阻害薬が、今、色んな新しい技術でできている。それ以外にあったりしますか、業界内で、あ、これ画期的だなみたいなものを。パープルさん。
パープル もう一つ、今アメリカではそろそろ承認されるかなというものにCAR-Tっていうのがあります。僕のイメージは免疫細胞の一つなんですけど、それがスーパーサイヤ人になったイメージです。なので、そういうムキムキになった免疫細胞が、がん細胞をやっつけてくれるっていう細胞の治療が承認されつつあります。
岸田 そういったものもあるんですね。ただ、まだ日本はもうちょっと先そう?
パープル でも、近々だと思います。
岸田 ありがとうございます。
【個別化医療】
岸田 じゃあ、次の質問、個別化医療って、その人に合った医療を提供しましょうって、国とか推奨していると思うんですけど、ぶっちゃけ、製薬企業側ってどう思っているのかなって。そういった定義とかを含めて、パープルさんからお願いできますか。
パープル まず、具合が悪くなると皆さん、病院に行き、そして何らかの病名が診断されます。例えば、風邪や糖尿病、あと何とかがんの場合もあるんですが、そういう割とざっくりとした病名でこれまでは治療をしていたわけですね。けれども、その風邪や糖尿病の中にもタイプや、色んなバリエーションがあって、それぞれに応じて適した治療っていうのは、それぞれ違うので、それに応じた適切な治療を見つけていくのが、個別化医療の定義かと思います。
岸田 ありがとうございます。個別化医療に関してピンクさん、思うところとか、アメリカでもなんでもいいですけど。
ピンク 例えば希少がんの話ですけど、我々、希少がんに取り組んでいないわけではなくて、今、がんの種類よりもどちらかというと特定の遺伝子とか、どうやって効くかのほうが割と大事になっていまして。特定の遺伝子でピタッと効くような薬剤が見つかった場合、その希少がんでも効くんですね。なので、その技術を見つけるために必死になっているので、例えば肺がんなら肺がんの中の特定の遺伝子なり、そういったもので効けば、もの凄く効く薬が出てきていると。なので、昔の、肺がんなら肺がん、乳がんなら乳がんっていう治療とはちょっと違ってきている感じがします。
岸田 皆さん挑戦されているわけですね。
ピンク なので、お金がかかって、正直言って今、製薬会社も体力がなくなってきているのは、そういうところで研究や治験でうまくいかなくて、凄くお金を使っているというのは、そういったところがさっきの1000億円につながるんじゃないかなと。
岸田 ありがとうございます。ホワイトさん、いかがですか。
ホワイト 個別化医療で今、結構、遺伝子のレベルで、本当にその患者さんに合うかを見るような時代なんですが、多分このお薬が合うことが分かる人が、凄く少ないと思うんですよね。で、合うかどうかが分からない、確定できない人達がほぼ大多数いる中で、そこで、使えなくなってしまい、治療の幅を逆に狭める結果になるかと。
岸田 治療の幅が狭まるんですか。
ホワイト 多分、遺伝子レベルで必ず合う人以外は使えないというお薬になってしまうと、本当は効くかもしれない患者さんに使える機会を失ってしまう結果にならないかなというのが、今の遺伝子解析の中で、課題かなと感じています。
岸田 ありがとうございます。レッドさんは。お願いします。
レッド ちょっと目先を変えますと、例えば同じがん腫の患者さんに、とある薬を使って頂きました。そこに違う副作用が出て続けられないとかっていう問題もあるんですね。そういう有効性だけではなく副作用の出やすさですとか、そういうところをしっかり情報にすると、これも個別化医療の一つかなとは考えております。
岸田 ありがとうがいます。ブルーさん、どうですか。
ブルー 事前の色んな検査によって有効性が高くなったり、副作用が少なくなったりすれば、どんどんやるべきだと思います。ただ、ホワイトさんが言われましたように、必ずしもその検査で対象とならなかった人でも効果がある薬は結構あるので、そういった人達の機会を奪ってしまうのはちょっと問題が出てくるかなと思います。あと小児がんの話で言えば、小児がんは生まれてすぐ、がんになる子が多いんですね。一方、大人の大腸がんとかは、年齢に応じて積み重なって発症するものなので、必ずしも大人のがんの薬が子供に効かないんですね。ですから小児がんの一番の問題は、大人の薬を子供に応用できない中で子供のがんだけを開発していくのは、さらにハードルが高い状況に陥っています。
岸田 なんで大人のがんのやつが子供に適応できないんですか。
ブルー やっぱりがんの発症のメカニズムか全然違ったりしているので。
岸田 そうなんですね。メカニズムがまた違うから、それ用のものが必要なんですね。
ブルー そういうことです。
岸田 ありがとうございます。また会場の中で、もし患者さんで質問等ございましたら。じゃあ、そこの青年、何かありますか。
C- 個別化で、その遺伝子変異で効く薬があるにもかかわらず、保険の承認が下りてないから、自費になる場合が今後、出てくると思うんです。そこに対して製薬企業さん側からアプローチはできるんですか。
岸田 ありがとうございます。製薬企業さん側からのアプローチ。ピンクさん。
ピンク 製薬企業側からっていうのは、ちょっと難しいかもしれないですね。割と今、医師主導治験とかで既に適用が取れているような薬剤の場合、そういったものを先生が中心となって開発されている。
岸田 その医師主導治験、患者側からしたら治験は治験でしょと思っちゃうんですけど、他のやつとどう違うんですか。
レッド ちょっと難しいんですが、医師主導であるからこそ、レギュレーション(規制)がちょっと違います。やっぱ製薬企業がやると、厳しいレギュレーションがかかったりする。それを医師側のほうで、しっかり医師の責任の下やってくれると、治療に近い形での試験という形で、適応外に関してのアプローチはそちらの方がハードルは低いかもしれないと捉えています。
岸田 そうなんですね。パープルさん。
パープル これまでがんの開発って、がんの種類、何とかがんに対しての臨床試験を行ってきたんですが、今後、特に海外ではこの遺伝子変異がある色んながんに対しての臨床試験も始まっていると聞いています。ですので、今後は何とかがんとは別に、遺伝子変異による薬っていう使われ方も今後そうなっていくかと思っています。
岸田 今後、どれ位、先っすか。
パープル それも、もうアメリカの方では始まっているので、近い将来だと感じます。
岸田 近い将来。ありがとございます。他に大丈夫ですかね。ありがとうございます。
ブルー 製薬会社の関わりということでは、その医師主導治験の時に、薬の提供の要望があり、無償で薬を先生方に提供というところでの貢献があると思います。
岸田 ありがとございます。無償で提供されることもあるということで。これも患者さんからの事前の質問ですけど、新薬開発って、どこが一番お金かかると思いますか。
ブルー 今、言われているのは臨床開発、人で有効性、安全性を確認していく。その人への費用が今、非常に高騰して、その負担が結構大きいと思います。
岸田 ピンクさんがおっしゃった、大体1000億かかる場合の何パーセント位が、そのフェーズで使われるイメージですかね。
ピンク 正確な数字は出せないんですけど。半分とかはフェーズ3といいますか・・・。
岸田 フェーズ3ですね。フェーズ1~3があって、3を越えたらもうOKみたいな。
ピンク そうですね。そのフェーズ3で申請して承認っていう形ですね。
岸田 ありがとうございます。フェーズ3だけでも半分近くかかるということで。逆に製薬企業さん達から患者さんに聞いてみたいことはありますか。ブルーさん。
ブルー 皆さん、治験の情報はどこから入手しているのかをお聞かせ頂ければなと。
岸田 治験の情報。一番後ろの女性の患者会の方。治験の情報、自分のケースでもいいので、どうやって知っているかとか。
押田 肉腫の患者会、たんぽぽの押田と申します。治験の情報はやっぱりインターネットが主になります。
岸田 ありがとございます。その、また後ろにいらっしゃる『OVER THE RAINBOW』の。何で治験情報とか探していますかね。
D- 私達も、一応オンコロさんのサイトは使わせて頂いたり、あとは、先生から情報を頂いてサイトに上げたりとかです。
岸田 ありがとうございます。インターネットですよね、主には。ということなんですけど、なんかそれに対して一言。
ブルー 特に希少がんほど、患者さんを集める時に、患者さんをどうリクルートしていいか、手段が難しかったので、今のご意見、参考にさせて頂きたいと思います。
岸田 ありがとうございます。やっぱり色んな製薬企業さんと患者さん達がこうやって話す機会は、なかなかないと思いますので、こういった機会を大切にして、今後も続けていきたいと思います。皆さん、どうでした?結構、楽しかったですかね。ホワイトさん、代表して一言お願いします。
ホワイト 私も他の製薬さんからご意見を聞く機会もなかったので、そこも勉強になりましたし、やはり最終的にお薬は患者さんに使って頂くので、本当に安全で、効果のあるお薬を届けることが使命だと再認識できました。ありがとうございました。
岸田 はい、以上で『がんノート』のセッション終了になります。どうもありがとうございました。
- 日時
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2017年10月1日 / 東京都
※ このイベントは終了しました - ゲスト
- RFL東京上野