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インタビュアー:岸田 / ゲスト:宮嶋

舌がん闘病を乗り越えた宮嶋さんが語る実体験~愛犬と過ごす退院後の日常~

岸田 本日のゲストは宮嶋さんです。宮嶋さん、自己紹介をお願いできますか。出身は岐阜県で、現在は神奈川県にお住まいとのこと。そして会社の社長をされているということで、すごく緊張されているそうです。趣味は犬やエクササイズ、車とのことですが、今、画面に映っているのが宮嶋さんのワンちゃんですか?

宮嶋 はい、トイプードルなんですけど、よく「本当にトイプードルなの?」と言われます。正直、私自身も最終的には分からないですけど(笑)、うちの奥さんとは「どっちでもいいよね」と話しています。

岸田 ちなみに、こちらのお写真はどんな写真ですか?

宮嶋 これは今年のゴールデンウィークに撮ったものです。私が退院してから初めて、家族で伊豆のペンションに行ったときの写真です。犬連れOKのペンションで、食事の風景ですね。うちのワンコが何かを狙っているところです。

『口内炎』と思っていた舌の痛み-舌がんステージ3告知までの経緯

岸田 かわいいですね。ありがとうございます。そんなワンちゃんと暮らしていらっしゃる宮嶋さんですが、がんの種類は舌がん、ステージ3。告知を受けたのが57歳、そして現在も57歳ということで、本当に最近、治療を受けられてきたんだと思います。治療方法としては手術や薬物療法を行ってこられたと伺っています。

 ここからは、宮嶋さんのペイシェントジャーニーを見ていきたいと思います。気持ちの上下をグラフで表したものを拝見しながら伺っていきますね。まず、56歳のときにご家族で旅行に行かれたとありますが、これは先ほどのお話に出た伊豆旅行とはまた別ですか?

宮嶋 はい、これは病気になる前に家族で行った鳥羽旅行のことです。ちょうどコロナ禍で、少し落ち着いた時期に行ったものでした。何度か波がありましたよね、その合間のタイミングでした。

岸田 三重の鳥羽に行かれたということですね。

宮嶋 そうです。

岸田 旅行のあとに「舌に違和感」という記録がありますが、どのような違和感でしたか?

宮嶋 歯を磨いていたときに、左の舌の裏に「チクッ」と鋭い痛みを感じたんです。それが最初でした。ずっと続いていたわけではなく、本当に一瞬のような痛みで。最初は「歯が尖っていて舌に当たったのかな」と思っていました。

岸田 なるほど。歯の形で舌に刺激があったのかな、と。

宮嶋 はい。痛みも短期間で、ずっと続くものではなかったです。

岸田 そこから少し上がっていくのは、歯科を受診されたタイミングということですか?

宮嶋 そうです。しゃべるときに痛みが出ることもあり、妻に「病院に行ったほうがいい」と言われて歯医者に行きました。口腔外科も併設されていたので、ちょうど良いと思って受診したんですが、そのとき先生に言われたのは「内側に生えている歯が舌に当たっているのでは」ということでした。歯のクリーニングやちょっとしたコーティングをしていただき、「これは歯が原因なんだ」と思い、安心しました。そのときは「大したことない」と思ったので、気持ちは上がっていたんです。

岸田 なるほど。そこから「コロナに感染」とありますね。

宮嶋 はい。夏前ぐらいに感染しました。この病気とは関係ないですが、ちょっと肺炎っぽい感じもあって不安でした。

岸田 舌の違和感はそのころも続いていた?

宮嶋 そうですね。後から思えば、1カ月以上も「口内炎みたいな症状」が続いていたのでおかしいのですが、そのときは波がありました。痛みが強くなったり、少し落ち着いたり。それでまた同じ歯医者に通っていました。

岸田 再び歯科治療をされて、ペイシェントジャーニー上では一度上がっていますね。

宮嶋 そうです。受診すると痛みが少し和らぐことがあったので。先生からは「舌の口内炎でしょう」と言われ、歯のエナメル質が削れてギザギザになっている部分に舌が当たっている、と説明を受けました。口内炎も時間がたてば落ち着くんじゃないか、と言われたので、その言葉を信じて、時々通っていました。

岸田 ただ、そのあと一気に下がっていきますね。「マウスピース」「洗口液」と記録されています。

宮嶋 はい。先生と相談してマウスピースを作りました。歯ぎしりを防ぐようなものですね。舌と歯が直接当たらなければ痛みが和らぐと思ったんです。実際に2回作りました。

 それと並行して、薬局で売っている洗口液をいろいろ試しました。ただ、低刺激のものではなくアルコール入りの強いものを選んでしまい、口に含むとスースーして一瞬楽になるんですが、結局、痛みは収まらず。年末にかけては、むしろ我慢できないレベルの痛みにまで悪化していきました。

転居先の歯科医が気づいた『これは口内炎ではない』

岸田 洗口液とかで、少し痛みを紛らわせながら過ごしていったあと、「他の歯科へ」とありますが、これは紹介を受けて行かれたんですか?

宮嶋 最終的には紹介状を書いていただいたんですが、その前に引っ越しがありまして。愛知県から神奈川県に移ったんです。やっぱり、通いやすい場所がいいと思って、近くの歯科を新しく探しました。そのとき、前の歯科の先生に紹介状を書いていただいたんです。実際には2カ所の歯科に行ったんですが、最後にかかった2カ所目の先生から「これは口内炎ではない」と言われて、「えっ?」と驚きました。その日のうちに大学病院へ紹介状を書いてくださって、すぐに電話もしてくださったんです。午前中の受診だったので「今すぐ行けば間に合う」と言われ、慌てて大学病院へ駆け込みました。正直、まさかそうだとは思ってなかったので、本当にびっくりしました。受付の時間ギリギリに走って行った記憶があります。

岸田 そこでがんの告知を受けることになるんですね。

宮嶋 まずは大学病院の分院の歯科で「生検をしましょう」と言われ、舌に麻酔をして組織を採りました。先生が触って「ちょっと固いですね」と言われて、「えっ?」と思いましたね。その結果が出るのに2週間かかると言われ、1週間後に抜糸に行ったときに「悪いものの可能性が高い」と話されました。その後、本院かがんセンターかを選ぶことになり、ここで初めて「がん」という言葉を聞きました。そのとき「これはただごとじゃない」と実感しました。それまでは「良性かもしれない」と半分くらい思っていましたから。最終的に大学病院本院で詳しい検査を受け、12月23日にすべての検査が終わったタイミングで正式に告知を受けました。

岸田 そのときは、もうある程度覚悟されていたんですか?

宮嶋 はい。12月ごろには、もう寝ているときもマウスピースを付けていて唾液が飲み込みにくかったり、食事のときに嚥下がつらかったり。時々、血が混じることもありました。「これはただごとじゃない」と思っていましたから、告知を受けたときは「やっぱりか」と。妻は、最初は舌ではなくほっぺの裏の口内炎だと思っていたみたいです。告知は一緒に聞きましたけど、妻も「やっぱりそうなんだ」と覚悟していたと思います。検査もRIやCTを重ねていましたから。

岸田 そこから抗がん剤治療、そして手術へと進んでいかれたんですね。

宮嶋 はい。まず2月に手術をすることが決まり、その前に1月に1週間程度入院してFP療法という抗がん剤治療を受けました。入院も手術も初めてだったので、すべてが初めて尽くしでした。副作用は倦怠感や便秘、食欲不振。特に病院内の空気が乾燥しているのがすごくつらかったです。眠れないし、筆談でしかやり取りできない。1月の入院は本当に大変な記憶しかありません。

9時間の大手術-舌半切除術と皮弁再建術

岸田 そして2月に手術をされたと。

宮嶋 はい。2月2日に手術を受けました。舌を半分切除して、左腕の筋肉を使って皮弁をつくり、血管をつなぎました。手術は9時間かかりましたね。歯が当たっていた部分の奥歯も3本抜きましたし、リンパ節も一部取っています。さらに腕から皮弁を取った部分には、太ももの皮膚を移植しました。大変な手術でした。

岸田 今こうしてしっかりお話されているのが本当にすごいです。

宮嶋 それは先生の腕が良かったことと、たまたま僕の喉の奥の筋肉がまだ機能していたことが大きいと思います。皮弁のサイズも早く馴染んでいったようで、ラッキーだったと思います。

岸田 一番つらかったことは、やはり術後の痛みですか?

宮嶋 意外かもしれませんが、口の中の痛みはあまりなく、腕が一番つらかったです。皮弁を取った部分が突っ張って、感覚も鈍く、術後からずっと痺れています。入院中も「腕が痛い」とよく看護師さんに訴えていました。今も完全には取れません。それが一番つらいですね。

岸田 あと、もう一つとおっしゃいませんでした?

宮嶋 痰の吸引ですね。これは、体験談でほかの方も話されていたと思いますが、本当に夜寝ているときなど、窒息しそうになるくらい苦しいんです。ナースコールを押しても、看護師さんは忙しいので少し待つこともありますが、来ていただいて「キュッ」と吸引していただくと「ああ、助かった」と思えました。あれをやっていただけなければ、呼吸できずに大変なことになっていたと思います。ほかにもいろいろ大変なことはありましたが、一番記憶に残っているのは腕の痛みと痰の吸引ですね。

岸田 ありがとうございます。そこから退院されて、職場復帰をされたんですよね。

宮嶋 はい。私が入院中は、会社のメンバーが代わりに業務を担ってくれていました。復帰の際も在宅勤務を認めていただいていたので、パソコン作業と出社を組み合わせながらスムーズに戻ることができました。退院後は社員を集めて、自分がなぜ休んでいたのか、病気から学んだことなども含めてお話ししました。そうしたことで理解も得られ、温かく迎え入れてもらえました。

岸田 よく考えたら社長さんでしたもんね。

宮嶋 小さな会社の社長なので大したことはないですよ(笑)。

岸田 その後、ワンちゃんの脚に腫瘍が見つかったと。

宮嶋 そうなんです。うちのトイプードルのココちゃんが、トリミングのときに脚にできものがあると指摘されました。病院では「良性だろうし、放っておいても大丈夫」と言われましたが、自分ががんを経験しているので、悪い可能性があるなら早く処置したほうがいいと思いました。結果的に切除して良性でしたが、聞いたときはすごく不安でした。犬は痛みを訴えられませんからね。

岸田 ご自身の経験から敏感になっちゃいますよね。

宮嶋 はい。だからこそ「大丈夫だ」と確認できて安心しました。

岸田 そして新しい会社を設立されたんですね。

宮嶋 はい。前職のグループ会社の一つとして、新しいベンチャー企業を立ち上げ、その代表を務めています。完全に独立した会社ではないですが、新しい挑戦を任されている形です。

岸田 その後、舌の縫い目にできものができて…。

宮嶋 はい。術後は手鏡で患部をよく見るようになったんですが、縫合部分にポツポツとできものが出てきて、再発かと心配しました。先生からは「皮弁に再発することもある」と聞き、要観察となりました。幸い今は消えて別の場所に小さなできものがある程度ですが、やはり不安になります。だから今は「何かあればすぐ病院へ」という姿勢で過ごしています。

岸田 ありがとうございます。その後はご家族やワンちゃんと旅行もされたんですよね。

宮嶋 はい。三重県の鳥羽以来、退院後にようやく実現できました。ゴールデンウィークに伊豆の犬同伴OKのペンションに行きました。

岸田 そして今はスポーツクラブにも通っているとか。

宮嶋 はい。1年前は体重が120kgありましたが、今は84kgまで減りました。夜に運動して汗をかき、しっかり睡眠をとるリズムができています。膝の負担も減り、体調も良好です。

岸田 ただ、CTでリンパの腫れが見つかったときもあったんですね。

宮嶋 そうなんです。定期検査でリンパに腫れが見つかり、組織を採取しました。「もし悪性なら再手術」と言われて不安で仕方なかったです。その1週間は本当に憂鬱でした。幸い結果は問題なく、先日の診察でも大丈夫とのことでしたが、3カ月ごとにCTを受けるたびにドキドキしています。

 

舌がん闘病中の不安克服法-体験談動画とチームサポートが支えた治療期間

岸田 心配になりますよね、毎回ね。ありがとうございます。そんな宮嶋さんが、困ったときにどう乗り越えたのかを伺っていきたいと思います。

宮嶋 舌の痛みは、唾を飲むときも、食事や会話のときも常に伴いました。特に昨年の12月から1月にかけては、話すこと自体を控えていました。その間、大事な会議では仲間が代わりに発表してくれたり、Web会議ではチャットでコメントを書いて読み上げてもらったりと、会社のメンバーに大いに助けてもらいました。

 また、入院中は筆談でコミュニケーションを取り、家では妻が毎回ミキサー食を作ってくれました。思うように伝わらずイライラすることもありましたが、今振り返ると本当に感謝しかありません。

さらに、不安を乗り越えるために『がんノート』を見続けました。術前も術後も、実際に経験された方の体験談を聞くことで、「地獄のような3日間」に備えることができましたし、安心感や勇気を得ることができました。入院中は充電が切れるまで動画を見ていましたね。

岸田 本当にありがとうございます。『がんノート』がお役に立ててうれしいです。

宮嶋 いや、本当に役立ちました。経験談がシミュレーションになって、心の準備ができました。

岸田 ありがとうございます。では最後に、宮嶋さんから視聴者の皆さんへのメッセージをお願いします。

がん体験者が語る「体のシグナルに向き合う勇気」と「病気との付き合い方」

宮嶋 これ、自分に向けてでもあるんですけど、いつもと違う体のシグナルに向き合う勇気。あと、それに対応するために、コミュニケーションと気分転換っていうのが大事だなと思っております。

まず、最初の勇気なんですけど、私は舌の痛みを感じてからしばらくの間、歯医者に通うんですが、「口内炎だ」ということで、ある意味、安心をしていました。患部をじっくり見て、それをインターネットで調べる勇気は、当時はなかったと思います。ただ、今は病気を経験して、少しは向き合える勇気を持てるようになったかなと思っています。

また、その病気について誰かに相談するということも、当時は少なかったなと思います。

そして、対策というか、大事にしているのは気分転換です。運動したり、旅行に行ったり、映画や本、スポーツなど、楽しいことを頭に描く。あまり考えすぎずに、一歩外に出たり行動に移すことで気分を切り替えるようにしています。つらいことや不安なことはありますが、そこに考え込まずに過ごすことが、病気と長く付き合ううえで必要だと思っています。

今も完治したわけではなく要観察が続きますが、このような気持ちで向き合っていきたいです。以上です。

岸田 ありがとうございます。考えれば考えるほど、僕もそうですが、気持ちが下がっていってしまうので、どこかで吹っ切れたり、違うことを考える時間を持つのは本当に大事だと思います。ドラマを見る人もいれば、どこかへ出掛ける人もいるでしょう。皆さんも自分に合った方法で、ぜひ工夫していただければと思います。

ありがとうございます。これにて、もうあっという間ですが、『がんノートmini』のお時間となってまいりました。きょうは宮嶋さん、ご出演いただきまして、どうもありがとうございました。

宮嶋 こちらこそ、ありがとうございました。お疲れさまです。

岸田 お疲れさまです。では、また次の動画でお会いしましょう。それでは皆さん、バイバイ。

※本ページは、経験者の体験談を扱っております。治療法や副作用などには個人差がございますので、医療情報に関しましては主治医や、かかりつけの病院へご相談、また科学的根拠に基づいたWebページや情報サイトを参照してください。
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